空想上の存在として世界中で知られている「魔女」。そんな魔女には悲しい過去と不思議な魅力がありました。
今回は魔女の伝説とその正体、悲劇の魔女狩りなどについてご紹介します。
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目次
魔女
①魔女とは?
魔女とは、超常的な力(魔法)を駆使する人間の総称です。古くから巫女や祈祷師など霊的な職業は女性が務めていたため、これらも魔女と同一視されることがあります。
魔女は単なる超能力者ではなく、黒魔術などの呪術によって人間社会に被害を与える存在だとされています。
image:John William Waterhouse
特に過去のヨーロッパにおいては魔女は悪魔と契約した危険な人間であり、宗教を破壊する者として恐れられていました。そのため、後述する魔女狩りのような大量虐殺が発生してしまったのです。
現在では映画やゲームのキャラクターとして広く受け入れられている魔女ですが、一部の地域では未だに「不幸の象徴」として扱われています。
②男の魔女は何と呼ぶ?
魔女という言葉は「女」の文字が入っていることからもわかるとおり、そもそもは女性を表す言葉です。これに対して魔法を使う男性は「魔術師」と呼ばれます。また、男女の区別をしない場合は「魔法使い」という言葉が使われます。
image:publicdomainpictures
英語ではさらに細かく分類されており、魔女の「Witch(ウィッチ)」、魔術師の「Warlock(ウォーロック)」の他にも魔法使いを表す「Wizard(ウィザード)」や妖術師を意味する「Sorcerer(ソーサラー)」などが使い分けられています。
しかし、魔女狩りの時代では男性もその対象となっており、性別を区別せずに「魔女」という言葉が使われていました。
③実在の魔女とその伝説
人類の歴史の中ではこれまで何人もの人々が魔女や魔術師だとされてきました。彼らの多くはそれが事実か否かに関わらず非業の死を遂げています。
ここでは魔女だと判断された実在の人物と、彼女たちにまつわる伝説をご紹介します。
①ジャンヌ・ダルク
魔女だとされた人物の中で最も有名なのは、フランス百年戦争時代のジャンヌ・ダルクでしょう。彼女は農家の娘に生まれましたが、神の啓示を受けてシャルル7世をフランス王にすべく軍隊に身を投じます。
聖少女と呼ばれたジャンヌの影響は凄まじく、一致団結した当時のフランス軍は快勝を重ねることになりました。
image:Hermann Stilke
しかし、捕虜として捕まった後は敵勢力に身柄を確保され、人民を惑わした魔女として最後は処刑されてしまいます。ジャンヌ・ダルクの魔女裁判の背景には、政治・宗教的な思惑が数多く存在していたといわれています。
そのため現在では彼女は魔女としてではなく、人々を導いた「聖人」として扱われています。聖少女ジャンヌ・ダルクの逸話や生涯については関連記事にまとめています。
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②アリス・キテラ&ペトロニーラ・ディ・ミーズ
アリス・キテラはイングランドで初めて魔女裁判にかけられた人物です。資産家の夫と結婚しており、その屋敷で雇っていた人物がペトロニーラ・ディ・ミーズでした。
アリスは類稀な美貌で次々と金持ちの男性と結婚しましたが、何故か夫は直ぐに死んでしまいました。そのため魔法を使って夫を殺害し、私腹を肥やしているとして魔女裁判にかけられたのです。
image:maxpixel
彼女は魔女として処刑されることになってしまいますが、命からがら国外に逃亡することに成功しました。しかし、召使のペトロニーラだけが捕まってしまい処刑されてしまったのです。
死の間際にペトロニーラは「私は魔女見習いに過ぎない!奥様の方が私よりも何倍も優秀な魔女だ!」と言ったと伝えられています。
③マリ・ダスピルクエット
マリ・ダスピルクエットは16世紀のフランスで魔女裁判にかけられた人物です。彼女は7歳の頃からサバトに通う筋金入りの魔女だといわれていました。
image:maxpixel
彼女は自由自在に空を飛ぶことができ、山羊の頭を持つ悪魔とくちづけをしたといわれています。
④ラ・ヴォワザン
ラ・ヴォワザンは17世紀に存在した有名な魔女です。彼女は占星術やタロットカード占いを本業にしていましたが、やがて毒薬の製造や黒魔術に傾倒するようになりました。
ラ・ヴォワザンは毒薬や媚薬の販売で財をなしており、ルイ14世の妾であるモンテスパン侯爵夫人も彼女の薬に頼ったといわれています。
image:Antoine Coypel
しかし、同じく毒薬を製造していた人物が逮捕されたことから彼女の悪行が明るみになりました。そしてラ・ヴォワザンは魔女裁判にかけられ、最後は死体を焼却され灰を空中に撒かれてしまったのです。
当時の人々はこの灰を吸い込むことで魔女の呪いを受けることを恐れたといわれています。事実、その後のフランスでは謎の毒殺事件が頻発したそうです。
⑤マンテウッチァ・ディ・フランチェスコ
マンテウッチァ・ディ・フランチェスコは15世紀のイタリアに実在した魔女です。彼女は赤ん坊から血液を抜き取り、それを使って薬を精製していました。
image:maxpixel
また、夜になるとサバトに出掛けていたといわれています。彼女も魔女裁判にかけられ火あぶりの刑に処されることになりました。
⑥マリ・ド・サンス
マリ・ド・サンスは17世紀のフランスで魔女といわれた実在の女性です。彼女は子どもばかりを狙う殺人鬼であり、その異常性から魔女裁判にかけられました。
image:Edward Frederick Brewtnall
マリ・ド・サンスは生きたまま子どもの皮を剥いだり、かまどに投げ込んだり、獣に食わせたりしたといわれています。黒魔術やサバトなどには参加しておらず、現在では単なる猟奇殺人鬼だったと考えられています。
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⑦イザボー・シェイネ
イザボー・シェイネは1656年に魔女裁判にかけられました。彼女の証言は驚くべきもので現在でも記録が残っています。
記録によると幼い頃の彼女は足が不自由でしたが、あるとき不思議な女の手引きによって悪魔に足を治療してもらいます。そして、それ以降彼女はその女と一緒に魔女たちの集会に参加するようになったというのです。
image:maxpixel
また、悪魔からお金を授かったが、家に帰るとただの葉っぱに変わってしまったとも証言しています。やはりイザボー・シェイネも最期は火刑に処されています。
④魔女の集会「サバト」とは?
サバトとはヨーロッパで語り継がれる魔女たちによる悪魔崇拝の集会です。ヨーロッパ各地では土曜日の夜は魔女たちがサバトを開くといわれていますが、根拠の無い都市伝説のひとつだと考えられています。
中世初期のヨーロッパではおとぎ話程度に捉えられていたサバトも、魔女裁判が行われるようになると現実味を帯びたおぞましい儀式として民衆に恐れられるようになりました。
image:maxpixel
その内容も大人数の男女での性の乱れや子どもを食べるという凄惨なものに変化していきます。さらには悪魔を崇拝し、生贄を捧げるという都市伝説まで生まれたのです。
そのためサバトは異端者による反宗教的な行為として危険視されるようになったのでした。事実、魔女裁判にかけられる人々の多くはこのサバトを目撃されたことがきっかけになっています。
しかし、現在ではそのほとんどが冤罪だと考えられています。怖い都市伝説については関連記事にまとめています。
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⑤魔女裁判とは?
魔女裁判とは魔女の嫌疑をかけられた人物を裁くための裁判です。魔女は反宗教的な存在であり、人民に害を与える悪の象徴とされてきました。
そのため魔女と告発のあった人物に対して、それが本当に魔女であるかを確かめる必要がありました。
image:Joseph E.
魔女の疑いがかけられたものは凄惨な拷問にかけられ、自白を強要されました。拷問に耐え切れずに魔女であると認めてしまった者も最終的には火あぶりの刑に処されることになっていました。
つまり、魔女裁判では魔女の疑いをかけられた時点でほぼ死刑が確定していたのです。現在では考えられない裁判が過去には行われていたのです。
⑥裁判における魔女の見分け方
魔女裁判では拷問の他にも魔女を見分けるために様々な方法が試されました。ここでは魔女の見分け方をご紹介します。
どれも理不尽で思わず身震いしてしまうようなものばかりです。
①水に浮くか調べる
魔女は水に浮くとされていたため、被疑者は冷やした水に沈められました。仮にその者が沈めば無実を証明できるとされていました。
image:maxpixel
しかし、水に沈められれば誰もが呼吸のために水面から顔を出そうとします。すると魔女であることが決定してしまいます。
無実を証明して水に沈むとは即ち溺死することを示していました。
②悪魔の印を調べる
悪魔と契約した魔女は体の何処かに「印」があるとされていました。そのため魔女の容疑をかけられた者は公衆の面前で裸にされ、悪魔の印がないかを調べられました。
image:maxpixel
しかし、この悪魔の印はほくろや痣のようなものだとされていたのです。体にほくろの無い人間はいませんし、連行される際に痣ができることも珍しくありませんでした。
③血が出ないか調べる
悪魔の印を見つけるとそこに針を刺して血が出るかどうか調べたといいます。仮に魔女であるならば針で刺しても血が出ないと考えられていたからでした。
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魔女と呼ばれた者は体中のほくろや痣をすべて針で刺されることになったのです。また、魔女は痛みを感じないといわれていたため、被疑者が泣き叫んでも芝居をしているのではないかと疑われました。
この検査には刺しても血が出ないように、錆びた針が使われたといわれています。
④空を飛ぶか調べる
魔女は空を飛べるといわれていたため、裁判にかけられた者の中には崖や高台から飛び降りることを強要させられた者もいました。魔女であれば空を飛び、無実であれば落下すると考えられたのです。
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しかし、当然ながら崖から飛び降りた人は落下する運命にありました。彼女たちは死をもってしか無実を証明することができなかったのです。
⑤容姿の醜さを調べる
魔女は容姿が醜いと考えられていました。この醜いとは美人かどうかだけでなく、イボの有無や体の形、髪の毛の色など様々でした。
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赤髪など当時は珍しかった身体的少数派もそれだけで魔女であると決めつけられたのです。現在はとても考えられないことです。
⑥祈りを唱えられるか調べる
魔女は神への祈りを正しく唱えられないとされていました。そのため魔女の被疑者は神への祈りを強要されました。
image:maxpixel
これだけで無実が証明できるのですから簡単なことに感じてしまいますが、これらは最終手段として様々な拷問の後に行われました。
そのため多くの者は瀕死の状態であり、神への祈りを唱えられる状況ではありませんでした。また、言葉を話せない精神病や失語症の人に対してもこれらは行われていたのです。
こうして多くの人々が魔女として処刑されていったのです。
⑦悲しい歴史「魔女狩り」
魔女狩りとは、15世紀から18世紀のヨーロッパで頻繁に行われた魔女裁判と処刑の通称です。12世紀頃から存在した異端審問ですが、15世紀になると社会悪の排除を目的として積極的に対象を処刑するようになりました。
1428年に最初の魔女裁判が始まると「異端の魔女の鞭」や「魔女に与える鉄槌」などの魔女に関する書籍が発売され、庶民のあいだで大流行します。
image:DietegenGuggenbühl
やがて17世紀に入ると魔女裁判はピークを迎え、教会へ寄せられる魔女の密告は膨大な数に上りました。その中には単なる隣人への嫉妬や逆恨みによる密告も相当数あったと考えられています。
しかし、魔女裁判には教会の威厳を示す役割もあったため、多くの無実の人々が拷問の末に処刑されていったのです。最終的に魔女狩りによる犠牲者は4万人に上るといわれていますが、一説によると数十万から数百万もの死者を出したという説も存在しています。
⑧魔女狩りの原因は?何故起こったのか?
理不尽な裁判と処刑をもたらした魔女狩りは何故行われてしまったのでしょうか?魔女狩りは異教徒を排除することで民衆へ教会の威厳を示し、権力の維持をする役割があったと考えられています。
そのため、宗教・政治的な背景が大きく関わっていたのではないかといわれています。
image:Burning witches, with others held in Stocks
しかし、後の研究により魔女裁判は権力の集中する都心部よりも、大した権力を持たない小領主が支配する地方の農村で多く起こっていたことがわかっています。これは庶民の魔女に対する恐怖や怒りを、領主が抑えきれなかったためではないかと考えられています。
つまり、魔女狩りは庶民の悪魔を恐れる心によって引き起こされていたということです。現在では魔女狩りは、自然現象や質病者に対する当時の人々の無知さと、集団ヒステリーによって起こったものだとされています。
⑨魔女狩りはどのようにして衰退したのか?
凄惨を極めた魔女狩りですが、17世紀も終わる頃になると急速に勢いを無くしていきました。そして18世紀に入るとほとんど行われなくなっていきます。
その原因は諸説ありますが、ガリレオ・ガリレイやアイザック・ニュートンなどの登場により、ヨーロッパで近代的な意識改革が行われたことが大きな要因だといわれています。
image:T. H. Matteson.
事実、18世紀に入ってからは魔女の密告があっても裁判の末に無罪になることがほとんどでした。これは自然現象や病気への理解が広まったために、問題が悪魔や魔女ではなく人間個人にあるものだと周知されるようになったからだといわれています。
しかし、こうした意識改革は短期間で起こるものではなく、単に集団ヒステリーが解消されていったからではないかとの意見もあります。そもそも嫉妬や逆恨みからの密告が多かったため、魔女狩りを煽っていた村人たちもこれらに正当性がないことに気付いていたのかも知れません。
こうして多くの犠牲者を出した魔女狩りは衰退していったのです。
⑩魔女は実在したのか?その正体は?
過去には魔女狩りという大規模な虐殺の対象となった魔女ですが、現在ではその存在を信じている人はほとんど存在しません。過去の人々が恐れた魔女とは一体何だったのでしょうか?
ここでは魔女と呼ばれた者の正体について有名な説をご紹介します。
①迷信・妄想説
初期のサバトが都市伝説あったことからもわかるようにそもそも魔女という存在はおとぎ話の産物でした。それを当時の人々が実在すると信じ込み、自分たちの理解を超えている人物を魔女として扱うようになったとする説です。
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人には共通の敵を持つことで一致団結するという性質があり、これが集団ヒステリーを引き起こすきっかけになったとも考えられています。現在ではこの説が最も有力であり、魔女は空想上の存在であるとされています。
②猟奇殺人犯・サイコパス説
いつの時代にも常軌を逸した恐ろしい殺人犯は存在しています。その犯行は凄惨を極め、人々を恐怖の底に突き落としました。
犯人が捕まった後もそれは人間ではなく憑りついた悪魔の仕業ではないのかと考えられたのです。
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事実、魔女裁判で処刑されたマリ・ド・サンスは、子どもばかりを殺害する異常な猟奇殺人者でした。人々の理解を超えた犯罪者に対する恐怖が、魔女を生み出すきっかけになったとしても不思議ではありません。
③身体的少数派・精神疾患者説
魔女に関する伝承では醜い姿やその土地では珍しい毛髪の色が語られています。そのため身体的少数派や偶然その土地にたどり着いた異人種を魔女だと考えたのではないかという説です。
日本で最も有名な妖怪である鬼も、漂流してきた外国人がその正体ではないかといわれています。
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また、精神病を患った人に対しても正しい知識がない時代では悪魔憑きなどの誤解が生まれていました。このような病気に対する無知が魔女の正体だったのかも知れません。
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④超能力者説
最後は当サイトらしくオカルト目線で魔女の正体について考えてみたいと思います。魔女は不思議な力を持っていたとされるため、殺人犯や病質者が正体だとすると矛盾が生じてしまいます。
そのため古くから世界中で報告されている超能力が魔法の正体かも知れません。つまり魔女は超能力者だったとする説です。
image:maxpixel
超能力といわれる不思議な力については、その多くがトリックや偽装であったことがわかっています。しかし、科学者が首を傾げるような事例が存在することもまた事実なのです。
超能力については関連記事にまとめています。
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いかがでしたか?古くから世界中で語られる魔女についてご紹介しました。悲しい過去を持ちながら魔法という不思議な魅力も併せ持つ魔女。
世界にはまだまだロマンが溢れています。