織姫ベガと彦星アルタイル!七夕伝説を持つ恒星の真実12

織姫ベガと彦星アルタイル


七夕伝説で語られる織姫と彦星の物語。その織姫と彦星とされるベガとアルタイルには天体としてのロマンと魅力が溢れています。
今回は天体としての織姫ベガと彦星アルタイルをご紹介していきます。

 
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織姫ベガと彦星アルタイル

①ベガとは

ベガは七夕において「織姫星(おりひめぼし)」と呼ばれる恒星です。こと座を構成する星の中で最も明るい天体であり、ベガ、アルタイル、デネブを結ぶ三角の直線は「夏の大三角」としても知られています。

ベガ
画像:NASA

近年の研究で恒星であるベガを中心に惑星が形成されていることが判明したため、太陽系に非常に近い形態を持つ可能性が指摘されています。また、ベガは巨大な恒星であるにも関わらず一周12.5時間という超高速で自転しており、現在の速度からあと少しでも回転が速くなればそれに耐え切れずに崩壊してしまうことがわかっています。

 

②アルタイルとは

アルタイルは七夕において「彦星(ひこぼし)」と呼ばれる恒星です。一等星としてわし座を構成する星のひとつであり、ベガと同じく夏の大三角の一角に数えられています。アルタイルもベガと同じく高速で自転しており、その影響で綺麗な球体ではなく楕円形をしていることがわかっています。

アルタイル
画像:NASA

また、アルタイルは3つの伴星を持つ「連星」であることもわかっています。連星は「双子星」と呼ばれることもありますが、アルタイルは4つの星で形成されているため「四つ子星」が正しいということになります。

 

③七夕伝説とデネブの関係

七夕伝説は織物上手の「織姫」と働き者の「彦星」の悲恋の物語です。最高神である「天帝」の娘だった織姫は牛飼いの彦星と恋に落ち、父の許しを得て夫婦になります。しかし、新婚生活に溺れた織姫は織物をしなくなり、彦星も牛の世話をしなくなってしまいました。それに激怒した天帝は「天の川」によってふたりを引き離したのです。織姫と彦星は真面目に働くことを条件に、年に一度の「七夕の日」だけは天の川を渡って逢うことを許されたのでした。

七夕伝説とデネブの関係
画像:aminoapps

織姫と彦星が天の川を渡る際、どこからか現れる「カササギ」がふたりのために橋をかけるといわれています。このカササギがはくちょう座の「デネブ」です。ベガとアルタイルに並んで輝くはくちょう座は、実際に天の川に橋を架けるかのように翼を広げています。夏の大三角を形作る3つの星たちには、それぞれ七夕伝説に関わる逸話があったのです。ちなみに七夕の日に雨が降ると天の川の水かさが増し、織姫と彦星は逢うことができないとされています。年に一度の逢瀬なのですから星が輝く快晴を願いたいですね。

 

④ベガとアルタイルの名前の由来

ベガの名前にはアラビア語で「急降下する鷲(わし)」という意味があります。これはこと座とそれに属する星群の形に由来するもので、アルタイルのわし座とは関係がありません。ベガはこと座を代表する天体であることから、英語では「Harp Star(琴星)」とも呼ばれています。また、織姫星という呼ばれ方が一般的ですが、本当は「織女星(しょくじょぼし)」が正しいとされています。

ベガとアルタイルの名前の由来
画像:abc.Aquila

それに対して彦星であるアルタイルにも「牽牛星(けんぎゅうぼし)」という名前が付けられています。また、アルタイルにはアラビア語で「空を飛ぶ鷲」という意味があります。これはアルタイルがわし座を構成する代表的な天体であることに由来しています。アルタイルは複数の伴星を持ち、それが犬を従えているように見えることから「いぬかいぼし」と呼ばれることもあるようです。ベガとアルタイルには様々な名前が付けられているんですね。

 

⑤ベガとアルタイルの明るさ

ベガは地上から観測できる一等星の中では5番目に明るい恒星です。夏の大三角を構成する星の中でも最も明るく、それらの星を観測する際の目印にされています。ベガに次いで明るく同様に肉眼でも観測できるのがアルタイルです。これらの星は他の一等星と比べても比較的地球から近くに位置しているため、美しい光を地上にまで届けることができるのです。

ベガとアルタイルの明るさ
画像:AndreiFoss

 

⑥ベガとアルタイルの大きさ

ベガの直径は約400万キロメートルもあり、太陽と比べると2.8倍ほど大きい計算になります。アルタイルの直径も300万キロメートルほどなので太陽の2倍以上の大きさになりますが、他の一等星と比べてベガやアルタイルが特別大きいというわけではありません。

ベガとアルタイルの大きさ
画像:fallenZeraphine

夏の大三角のひとつであるデネブはその直径が太陽の108倍を超えているといわれています。一等星とされる星にはデネブのように巨大な恒星が多く存在しています。こうして考えるとこれだけの大きさがありながら、ベガとアルタイルは比較的小さい恒星だということがわかります。

 

⑦ベガとアルタイルの温度

ベガは表面温度が9,000℃を超える高温の恒星であることがわかっています。また、アルタイルの表面温度も8,000℃に達しています。太陽の表面温度はおよそ5,500℃であるため、ベガとアルタイルは太陽よりもずっと高温の天体だということがわかります。ちなみにデネブの表面温度もベガやアルタイルと大差のない8,200℃ほどです。

ベガとアルタイルの温度
画像:oo7genie

 

⑧ベガとアルタイルから地球までの距離

ベガと地球は約25光年離れています。これは最高時速が3万キロメートルに達するスペースシャトルに乗っても、ベガに到達するには90万年近くかかる計算になります。アルタイルも地球から約17光年離れており、高速のスペースシャトルでも到達までに61万年以上かかってしまいます。

ベガとアルタイルから地球までの距離
画像:ObsidianDigital

しかし、これだけ遠くに位置するベガとアルタイルも天文学的に考えれば地球からとても近くに位置している天体であるとされています。デネブなどは地球から1,400光年以上も離れており、到達にかかる時間は同じくスペースシャトルで5,080万年を超えてしまいます。

 

⑨ベガとアルタイルの色

ベガとアルタイルは比較的高温の恒星であるため白色の光を発しています。恒星はその温度によって放出する光の色が変化することがわかっています。3,000℃程度の温度の低い恒星は暗い赤色をしており、太陽のように6,000℃程度であればオレンジ色や黄色に輝きます。

ベガとアルタイルの色
画像:ahermin

表面温度が1万℃を超えると恒星は白色になり、2万℃に近いものは青白い光を発するようになるのです。地上から肉眼で観測する際もベガとアルタイルは美しい白い光放って見えます。

 

⑩ベガとアルタイルの寿命

比較的小型の恒星であるベガとアルタイルの寿命はおよそ80~100億年といわれています。恒星は小型のものほど寿命が長くベガやアルタイルよりも小さい太陽の寿命は150億年もあります。しかし、大型のものは放出エネルギーが膨大なため非常に短命で、デネブなどの巨大な恒星は数千万年ほどで死期を迎えます。

ベガとアルタイルの寿命
画像:DreamerWhit

年に一度しか逢うことができない織姫と彦星ですが、ベガとアルタイルの寿命の長さから面白い例え話が存在します。それは織姫と彦星が80億年のあいだに80億回逢うことが可能なため、人間の寿命に換算すると0.3秒に一度は顔を合わせている計算になるというものです。こう考えると七夕伝説は悲恋の物語ではないような気がしてきますね。

 

⑪ベガとアルタイルの距離

織姫ベガと彦星アルタイルのふたつの星の距離に関しても面白い話が存在します。ベガとアルタイルの距離は16光年、つまり151兆キロメートルも離れています。16光年ということは光の速さでも16年かかるということですから、織姫と彦星が一年に一度顔を合わせるためには光速よりもずっと速く移動しなければなりません。こういった話にあまりツッコミを入れるのも無粋ですが、現実を知るとふたりの距離のあまりの遠さに驚いてしまいますね。

ベガとアルタイルの距離
画像:ShadowYingZhi

 

⑫ベガとアルタイルの観測

ベガとアルタイルを観測するには晴れた夏の夜空が適しています。東を向いて空の高い位置に目をやると、ひと際明るい白く輝く星を見つけることができると思います。これが織姫ベガです。そこから南東に視線を下していくと周囲の星々よりも一段と明るく光るアルタイルを見つけることができるはずです。

ベガとアルタイルの観測
画像:Jim Thomas

さらにアルタイルから東に向かって視線を上げていくと少し暗いですが一等星のデネブが確認できます。ベガとアルタイル、デネブを結んだこの三角形が有名な夏の大三角です。

出典:wikipedia,wikipedia
画像:travelfreak

 

いかがでしたか?七夕伝説のモデルである織姫ベガと彦星アルタイルをご紹介しました。今年の七夕は織姫と彦星を探しに出かけてみてはいかがでしょうか。