天狗の種類とその正体!今も語り継がれる大妖怪の伝説とは

天狗


日本を代表する大妖怪「天狗」。この天狗には数多くの言い伝えと謎が存在しています。
今回は天狗の種類と語り継がれる伝承、その正体とされる説をご紹介します。

合わせて読みたい関連記事
日本のUMA妖怪!各地に伝わる有名な妖怪一覧
河童は実在するのか?その目撃事例と意外な正体
本当は怖い座敷わらし!怖ろし過ぎる伝承とその正体

 

天狗

天狗とは

天狗とは古くから日本に伝わる伝説上の妖怪、UMA(未確認生物)です。人間を魔の道に引きずり込むともいわれており、地域によっては神と同一視されることもあります。

天狗とは
画像:Gorrem

天候を操るなど妖怪の中でも特に強い力を持つとされており、人々から恐れられる存在でした。天狗は数ある妖怪の中でも最も有名なもののひとつといえます。

 

天狗の姿と種類

天狗は赤い顔面に長く伸びた鼻を持ち、山伏(やまぶし)の恰好をしているといわれています。また、天狗には「大天狗」、「烏天狗(からすてんぐ)」、「木の葉天狗」という3つの種族が存在し、それぞれの姿は少しずつ異なります。最も強い力を持つとされている大天狗は、他の天狗よりも体が大きく鼻も長いとされています。妖怪として上位に君臨する大天狗は巨大な鬼や人間に姿を変えることができるともいわれています。

天狗の姿と種類
画像:albino-Z

これに対して烏天狗は、その名の表す通りカラスのような顔と鋭いクチバシを持っています。また、背中には翼があり自由自在に空を飛ぶことができるといわれています。天狗の中でも最下位に当たる木の葉天狗は、他の天狗と違い2メートルを超える鳥の姿であるとされています。木の葉天狗の姿は一般的な天狗のイメージからは程遠く、妖力を持つ鳥と呼んだ方が想像しやすいかも知れません。

 

天狗の名前の由来

もともと天狗という言葉は中国で「流れ星」を表す言葉でした。中国では隕石が大気圏に突入する際の空気との衝突音を犬に例える習慣があり、それが天狗という不思議な生物を生み出す元となったのです。また、流れ星は災いの前兆であるとされていたことから、天狗は邪悪な存在であるというイメージが定着したといわれています。

天狗の名前の由来
画像:the-John-Doe

これらが海を渡って日本に伝わり、鼻の長い天狗という独自の伝承を生み出していったのです。その後、日本では流れ星ではなく雷が鳴る音を天狗の声だとする風習も生まれ、空に関係する妖怪として語り継がれることになります。

 

強力過ぎる天狗の団扇

天狗の中でも特に格の高い天狗は、奇数の羽でできた団扇を持っているとされています。この団扇はそれ自体に強力な妖力を宿しており、火を噴いて山火事を起こしたり天候を操って嵐を起こすことができました。

強力過ぎる天狗の団扇
画像:cg12,yang

その他にも瞬間移動や人の心を操る力などもあり、妖怪が持つ武器の中でも最強といえる性能でした。天狗の団扇には退魔の力もあるとされており、それに由来して形の似ているヤツデの葉にも厄払いの効果があるといわれています。

 

天狗の鼻はなぜ長い?

天狗の鼻が長く描かれるようになったのは今から450年ほど前だと考えられています。室町時代の絵師である狩野元信が残した「鞍馬大僧正坊図」には鼻の長い大天狗が描かれていました。これが鼻の長い天狗を描いた最古の絵であるとされています。

天狗の鼻はなぜ長い?
画像:HasaBattle

しかし、もっと以前から天狗の鼻は長いものだと伝承されていた可能性が高く、その由来は明らかになっていません。天狗を目撃したという記録も存在しているため、目撃者から鼻が長かったという証言があったのかも知れません。

 

天狗の言い伝え

天狗に関する伝承は古くから存在しています。ここでは天狗の言い伝えの中から特に有名なものをご紹介します。

①日本一の山を作ろうとした天狗

群馬県には非常に巨大な天狗の言い伝えが残っています。あるとき大天狗が群馬の榛名山(はるなさん)を日本一高い山にしようと考えました。しかし、土を掘っては山に盛りを繰り返していくうちに神通力が尽きてしまいます。

日本一の山を作ろうとした天狗
画像:photozou

やけくそになった大天狗が残っていた土を放り投げるとそれが現在の「ヒトモッコ山」になりました。また、このときに天狗が掘った穴に水が溜まり現在の「榛名湖」になったといわれています。

 

②牛若丸と天狗師匠

烏天狗は特に剣術に優れていたといわれているため、有名な牛若丸に剣を教えたという言い伝えが残っています。源義経こと牛若丸は七歳のときに僧になるために向かった鞍馬山で烏天狗に遭遇します。

牛若丸と天狗師匠
画像:duck113

父の敵として平家を滅ぼしたいと話した牛若丸に心を打たれた烏天狗は、彼に天狗の剣術を教えることになりました。この頃の牛若丸は毎晩のように寝床から抜け出し、烏天狗との修行に明け暮れたといわれています。

 

③目撃された天狗の群れ

静岡県の大井川では大量の天狗が目撃されたという言い伝えが存在します。その天狗は巨大な鳥のように見えましたが、顔は人というとても奇妙な生物でした。

目撃された天狗の群れ
画像:magnusink

目撃された大量の天狗は夜の大井川で魚を捕まえていましたが、人目に気が付くと一斉に飛び去ってしまったといわれています。これらの天狗は木の葉天狗に当たると考えられています。

 

④世界を滅ぼした天狗

1500年ほど前に地獄について書かれた古書「正法念処経」にも天狗が登場しています。それによれば山に入った天人があるとき空で激しい爆発を目撃します。驚いた彼らが身を隠すと巨大な天狗が姿を現し、どこかへ消えてしまいました。

世界を滅ぼした天狗
画像:MizaelTengu

これは天狗が天上にある兜率天(とそつてん)という世界を破壊した風景を記したものだとされています。天界を破壊する天狗が邪悪で恐ろしい存在であると記した伝承です。

 

⑤天狗になった天皇

日本の第75代天皇である崇徳天皇(すとくてんのう)にも天狗に関する逸話が残っています。崇徳天皇は自ら己の舌を噛み切り、噴き出した血で呪文を記し、その力で生きながらにして天狗になったといわれています。

天狗になった天皇
画像:Utagawa Kuniyoshi

爪や髪は伸び放題に伸び、夜叉さながらの姿となった崇徳天皇は都に疫病を流行らせ多くの大臣を病死させます。天狗の力を恐れた後の人々は、崇徳天皇を神として祀り「白峯神宮」を建設したといわれています。

 

⑥天狗になった呪術師

飛鳥時代に実在した呪術師「役小角(えんのおづの」にも天狗に関する言い伝えが残っています。役小角は強力な神通力を持ち、鬼を従えて雲に乗り自由に空を飛んだといわれています。

天狗になった呪術師
画像:Katsushika Hokusai

役小角は死後に大天狗になり、その力で妖怪の頂点に君臨する存在になったと伝承されています。役小角については「今昔物語」でも取り上げられており、山へ籠って修行をする「修験道」の開祖としても知られています。

 

⑦子どもを助けた天狗

愛媛県の石鎚山には迷子になった子どもを助けた天狗の話が残っています。あるとき男の子が山で行方不明になり、村人たちは彼を探して山に入りました。しかし、どれだけ探しても見つからないのであきらめて戻ると、村には行方不明になったはずの男の子が帰ってきていたのです。

子どもを助けた天狗
画像:AdamaSto

話を聞くと山の頂上で黒い大男と出会い、目をつむるようにいわれてそのとおりにするといつの間にやら村に戻って来ていたとのことでした。これは天狗が人間を助けた逸話として語り継がれています。

 

⑧天狗が起こす怪異現象

群馬県では山中で突然笑い声が聞こえるとそれは「天狗の笑い」という現象だといわれており、これに返して笑うとさらに大きな声で笑い返してくると言い伝えられています。また、山で突風が吹くと大きな岩が転がり落ちてくるとされており、これは天狗が投げた「天狗礫(てんぐつぶて)」だとされています。

天狗が起こす怪異現象
画像:ConeMonster

天狗は山神として信仰されている場合も多く、こうした山で起きる超常現象は天狗の仕業であると考えられてきたのです。

 

⑨天狗の住処

埼玉県の児玉郡には松を切ろうとした人が木から落ちて大怪我をするという事故がありました。これは松に棲みついていた天狗の仕業だといわれています。天狗が大松に宿るという話は日本各地に存在しており、山の神として扱われることがその由来であるとされています。

天狗の住処
画像:Kawanabe Kyōsai

愛知県の宝飯郡には松の大木の下に大きな洞窟があり、「天狗の巣」という呼び名が付けられています。実際にこの洞窟の中で天狗を目撃したという話も残っているようです。

 

天狗の正体は?

日本各地に数々の言い伝えを残し、目撃情報も存在する天狗の正体とは一体何なのでしょうか?ここでは天狗の正体とされているものの中から特に有名なものをご紹介します。

①自然現象説

天狗という言葉自体が流れ星から生み出されたものであるため、山中で起こる自然現象がその正体だとする説です。交通手段が乏しかった昔の日本では山は神の領域とされており、この世のものではない存在が支配していると考えられてきました。

自然現象説
画像:JForbes1701

伝承に伝わる天狗は山火事や天候を操るとされていますが、これ自体が山林では当たり前のように発生する自然現象です。自然を畏怖し敬う日本人の心が、天狗という存在を生み出したのかも知れません。

 

②外国人説

天狗の正体は遭難し日本に流れ着いた外国人だったとする説です。室町時代になるとアラビア人やペルシャ人はアジアにまで進出していたと考えられています。まだ造船技術が未熟だった当時の航海には難破がつきものであったため、日本へ流れ着く遭難者も少なくなかったといわれています。仮に当時の日本人が見たことのない外国人を目撃したとすれば、高い鼻や彫りの深い顔に驚き物の怪の類だと勘違いしてもおかしくはありません。

外国人説
画像:nixie04

また、天狗伝説で有名な寺の中にはユダヤ人の象徴である六芒星の印が残されているものがあります。ユダヤ人が神事の際に着用する「ヒラクリティ」という帽子が天狗の被りものに酷似しているため、日本に渡ってきたユダヤ人が天狗の正体なのではないかとする説も存在しています。

 

③UMA(未確認生物)説

天狗の正体は自然現象や外国人などではなく、当時確認されていなかった新種の生物だったとする説です。天狗は河童などと同じようにUMAの仲間として語られることもあるため、そのモデルとなった生物がいたのではないかともいわれています。

UMA(未確認生物)説
画像:sekien toriyama

天狗は人ほどに大きく空も飛ぶとされていますが、それに該当する生物はオオワシなど大型の猛禽類だけです。しかし、ワシの仲間は古くから日本人に知られており、それを天狗と見間違えるということは考えられません。昔の日本人が見た天狗とは一体何者だったのでしょうか?

出典:wikipedia
画像:RuxandraLache

 

いかがでしたか?日本を代表する妖怪天狗についてご紹介しました。河童や他の妖怪のように天狗伝説にも元となった生物が存在していると思われます。しかし、残念ながら現在ではその真実を知る術はありません。