地球から観測できる星の中で最も明るい天体「シリウス」。このシリウスにはあまり知られていない双子星の存在と地球への危険な影響の可能性がありました。
今回はシリウスという天体の詳細と明るさの秘密、超新星爆発の可能性などをご紹介します。
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目次
シリウス
①シリウスとは
シリウスは太陽と同じ恒星のひとつであり、地球から観測できる太陽系外の星の中では最も明るい天体です。シリウスはあまりにも明るいため地上から肉眼でも確認することができ、オリオン座の「ベテルギウス」やこいぬ座の「プロキオン」と合わせて「冬の大三角」と呼ばれています。一般的にはあまり知られていませんが、シリウスは「シリウスA」と呼ばれる恒星と「シリウスB」と呼ばれる白色矮星による双子星(連星)になっています。
画像:NASA
②シリウスの名前の由来
シリウスの名前はギリシア語の「セイリオス」という言葉に由来しています。セイリオスには「焼き焦がす」や「火花を散らす」という意味があり、あまりに明るいために肉眼でも観測できるシリウスにぴったりの名前といえます。シリウスはエジプト神話にも影響を与えており、神話に登場する「女神イシス」はシリウスと同一視されています。
③シリウスの明るさ
シリウスは地球から観測できる太陽系外の星の中では最も明るい天体であり、その明るさは2番目に明るい「カノープス」のおよそ2倍にも相当します。あまりに明るい天体であるため昼間でも観測できることがあるほどです。
しかし、シリウスは太陽系外の天体であるため、地球から観測するとより近距離に位置する太陽や月、金星や木星ほどは明るく見えません。しかし、位置によっては地球にずっと近い火星や水星よりも明るく見ることもあります。
④シリウスの大きさ
シリウスの主星であるシリウスAは太陽の2.5倍ほどの大きさと質量を持っています。これに対してシリウスBの大きさは私たちが暮らす地球とほとんど変わりがありません。
画像:NASA,ESA
しかし、白色矮星であるシリウスBが恒星だった頃は現在よりもずっと巨大で、質量も太陽の5倍以上だったと考えられています。当時のシリウスは現在よりもさらに眩い光を放っていたに違いありません。
⑤シリウスの温度
シリウスの主星シリウスAの表面温度はおよそ9,700℃だといわれています。太陽の表面温度は約5,500℃であることから、シリウスは非常に高温の天体であることがわかります。中心温度もシリウスAは2,000万℃を超えていると考えられており、太陽の1500万℃よりもさらに高温になっています。シリウスはその温度が高過ぎるために太陽のように赤色ではなく、青白い光を放っています。
しかし、シリウスBの温度はシリウスAをさらに上回り、表面温度は約25,000℃にも達すると考えられています。シリウスBは白色矮星であるためシリウスAほど明るくはありませんが、太陽の5倍近い高温と地球では考えられないほどの高密度を持つ天体なのです。
⑥シリウスと地球の距離
シリウスは太陽以外の恒星の中では地球から非常に近い距離に位置しています。その距離は8.7光年(1光年は9.5兆キロメートル)に当たります。これはスペースシャトルの最高速度で3万9千年あれば到達できる距離になります。
画像:tHs-Acid
私たち人類にとってはシリウスまでの道のりは遠く果てしない距離に感じてしまいますが、天文学的に見れば地球のすぐ近くに位置する天体なのです。
⑦シリウスが明るい理由
シリウスが明るく見える理由は、その巨大さと地球との距離にあります。シリウスは恒星であるために他の天体に比べて大きく、高温であるために強烈な光を放っています。また、地球から非常に近い距離に位置するためその光が鮮明に届くのです。宇宙空間には無数の星があり、シリウスよりも巨大で明るい天体も存在しています。しかし、地球との距離が近いためシリウスは地球から観測できる天体の中で最も明るい星となったのです。
画像:Celestia
⑧シリウスの色
今から1850年ほど前の古代ヨーロッパでは、シリウスは太陽のように真っ赤に輝く天体であると考えられていました。これは様々な書物にも記載されており、長いあいだ研究者たちの議論の的になっていました。
画像:flames6995
現在では恒星であるシリウスAは青白く輝いていることがわかっています。また、白色矮星であるシリウスBも赤い光を放つことはありません。過去に語られた赤いシリウスについては、第三の連星の存在説や大気中の成分によって赤色の光に変換されて観測されたという説が存在しています。
⑨シリウスの年齢と寿命
主星であるシリウスAの年齢はおよそ2~3億年程度だといわれています。以前は巨大なふたつの恒星の連星だったシリウスですが、今から1億2000万年ほど前に当時の主星だったシリウスBが寿命を迎えます。こうしてシリウスBは縮小して白色矮星になり、主星が現在のシリウスAに入れ替わったのです。
画像:artsfon
シリウスAも今後7~8億年程度でその寿命を迎えると考えられています。その後、シリウスAは赤色巨星になり最終的にはシリウスBと同じ白色矮星になってその生涯の幕に閉じることになります。シリウスの寿命は10億年ほどと太陽の170億年に比べると非常に短くなっています。その理由はシリウスが巨大な恒星であるためにエネルギー消費が膨大であることです。
⑩シリウスの超新星爆発とその影響
超新星爆発とは恒星がその寿命を終える際に大規模の爆発を生じる天体現象です。シリウスは地球と非常に近い距離に位置しているため、この超新星爆発が地球に及ぼす影響が心配されています。仮にシリウスが超新星爆発を起こした場合には有害なガンマ線の異常放出である「ガンマ線バースト」や大規模な衝撃波が地球を襲うことになり、地球上のほとんどの生物は絶滅してしまうと考えられています。
画像:galaxyclub
約4億4000万年前にオルドビス紀の地球で起こった大量絶滅の原因もこのガンマ線バーストだといわれています。しかし、超新星爆発は太陽の8倍以上の質量を持つ恒星のみに起こる天体現象であるため、太陽の2.5倍程度の質量しか持たないシリウスでは起こりえないといわれています。最もシリウスが寿命を迎えるのは7億年も後のことなので、それまで生き延びているかわからない私たち人類にとってこのような心配は杞憂でしょう。
⑪シリウスは太陽系に接近している
シリウスは現在、太陽系に接近し続けていることがわかっています。そのため接近するにつれシリウスはその輝きをさらに増していくことになります。しかし、6万年後を境に今度は太陽系から遠ざかっていき、20万年を超える頃には地球から観測できる最も明るい天体ではなくなってしまうといわれています。
画像:StAugustus
宇宙は常に流動し続けているため、観測状況はその時々によって変化します。シリウスBが恒星だった頃のシリウスは今よりも何倍も明るく輝く天体でした。しかし、主星だったシリウスBが寿命を迎えたことでその輝きは半減してしまいます。そして、いつかは地球からも遠く離れていき、やがてシリウスAもその輝きを失うことになるのです。
⑫シリウスの観測方法
シリウスを観測するなら「オリオン座」から探すのが一番簡単です。オリオン座は10月~2月の冬の夜空が観測に適しています。星空を眺めていると綺麗に3つの星が並んでいるのが確認できると思います。この3連星の左端の星から垂直に上方に向かうと赤く輝く「ベテルギウス」が発見できると思います。このベテルギウスから今度は「冬の大三角」を探していきます。
画像:latte
三連星からベテルギウスまでの距離の2.5倍ほどの間隔で、こいぬ座の「プロキオン」とおおいぬ座の「シリウス」を結んでいきます。これらの星は周りの星々よりもずっと明るいため簡単に見つけることができると思います。これが冬の大三角です。冬の大三角が観測できたら、ベテルギウスを頂点としたときに右下に位置しているのが今回の主役シリウスになります。シリウスは最も明るい天体であるためきっと見つけることができるでしょう。
いかがでしたか?最も明るい天体シリウスについてご紹介しました。あなたもこの冬はシリウスを探しに出かけてみてはいかがでしょうか?