広大な海の神として知られる「海と地震の神ポセイドン」。しかし、そもそもポセイドンとはどのような神様だったのでしょうか?
今回は海神ポセイドンの能力や凶暴な性格、ケンカの武勇伝などをご紹介します。
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目次
ポセイドン
①ポセイドンとは
ポセイドン(ポセイドーン)はギリシア神話に登場する「海と地震の神」です。大海を支配し全大陸にも強い影響力を持っているため「全知全能の神ゼウス」に次ぐ高位の神だといわれています。「ゼウス・エナリオス(海のゼウス)」という別名を持っているところからもポセイドンの実力がうかがい知れます。
画像:Ryunpos
ポセイドンの象徴となっている動物は馬で、金色たてがみの海馬「ヒッポカムポス」の引く馬車で移動します。また、珊瑚と宝石に彩られた海洋の宮殿に住んでいるといわれています。ギリシアの古代民族「ペラスゴイ人」が信仰していた大地の神がそのモデルとされており、地震を起こす力もそこから来ているのではないかと考えられています。
②ポセイドンの能力
ポセイドンは「トリアイナ」と呼ばれる三又の槍を武器としています。トリアイナの力は強力で自在に大津波や地震を引き起こしたり、如何なる物をも粉微塵に破壊することができました。また、ポセイドンは山をくり貫いて島を創ったり、大陸を割って川を創ることもできました。
画像:deviantart
ポセイドンよって引き起こされる地震や天変地異があまりに強力であったため、「冥府の王ハデス」も裂かれた大地から現世が冥界に干渉しないか心配したという逸話も残っています。ポセイドンはこれらの力によって大海や全大陸を支配したのです。
③ポセイドンの性格
ポセイドンの性格は非常に荒々しく、荒れ狂う大海に例えられることもあるほどでした。感情的で凶暴ともいえるポセイドンは礼を欠くこともあり、暴君のように人間を処罰することもあったといいます。ポセイドンが人間を裁くとき、その罰は個人単位ではなく町や国単位でおこなわれました。彼はその力で大嵐や巨大な津波を起こして罰を受ける人間を周囲の人々ごと破壊したのです。また、使役する海の怪物に街を襲わせることもありました。
画像:BART
全物質界を支配するといわれ、あらゆる神々の中でも高位に位置していたポセイドンですが、ただ一人兄(弟でもある)のゼウスにだけは逆らうことが出来なかったようです。ポセイドンはその荒々しい性格も手伝ってゼウスとよく口論になりますが、ほとんどの場合は兄の主張を受け入れる形になりました。
しかし、ポセイドンの力はゼウスと肩を並べるほど強く、兄弟である冥王ハデスと結託を結べば全知全能のゼウスでさえ敵わないといわれています。粗野で乱暴なポセイドンと比較的常識人のハデスが手を組む姿は想像することが難しいですが…。
④ポセイドンの家族
ポセイドンはゼウスやハデスと同じく「巨神族クロノス」と「大地の女神レア」の子どもとして産まれました。元々はハデス、ポセイドン、ゼウスの順でこの世に生を受けますが、子どもに権力を奪われることを恐れた父クロノスによってハデスとポセイドンは生後すぐに呑み込まれてしまいます。
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末子のゼウスだけが母レアの助けによってクロノスに呑み込まれることから逃れており、その後ポセイドンとハデスを助け出しています。この時、ポセイドン、ハデスの順にクロノスから吐き出されたために兄弟の優劣が逆転し、ゼウスが長男、ポセイドンが次男、ハデスが三男に入れ替わりました。この時の恩もあってポセイドンはゼウスに逆らうことができないのです。
⑤ポセイドンの妻アムピトリテ
ポセイドンは「穏やかな海の神ネレウス」と「女神ドリス」の娘である「アムピトリテ」と結婚しています。アムピトリテはとても美しい海の女神として知られていますが、海洋を操る力を持ち大津波や嵐を起こすこともできました。また、恐ろしい海の怪物や怪魚を飼うことが趣味でした。
画像:Greek gods and goddesses ii
美しいアムピトリテに惚れ込んだポセイドンは、自分と結婚してくれるよう彼女にアプローチしていきます。しかし、その粗野な性格からかアムピトリテはポセイドンを毛嫌いし、オケアノス宮殿に身を隠してしまいました。困ったポセイドンはイルカたちにアムピトリテを探し出すよう命じます。そのうちの一匹が見事アムピトリテを見つけ出し、ポセイドンと会うように彼女を説得しました。
また、一説にはそれまで存在しなかったイルカをポセイドンが創造し、贈り物にすることでアムピトリテとの仲が深まったという説もあります。こうしてイルカの働きによってポセイドンはアムピトリテと結婚することができたのでした。ポセイドンはイルカの功績を讃え、感謝のしるしにイルカを空に輝く「いるか座」に変えました。ポセイドンとアムピトリテのあいだには、魚の下半身を持つ「海神トリトン」、太陽神ヘリオスの妻となる「ロデー」、トラキア王エウモルポスを育てる「ベンテシキューメー」が産まれています。地震引き起こす大地の神だったポセイドンはアムピトリテとの結婚により、海洋を支配する海の力を手に入れたといわれています。
⑥ポセイドンの愛人メドゥーサ
兄ゼウスと同じようにポセイドンにも数えきれないほどの愛人が存在します。その中で最も有名なのがゴルゴン3姉妹の1人「メドゥーサ」です。ギリシア神話の怪物として知られるメドゥーサも、元は長い髪を持つ絶世の美少女でした。美しいメドゥーサに恋をしたポセイドンは妻の目を盗んではメドゥーサと密会を重ねるようになります。そしてある日、処女神「アテナ」の宮殿でポセイドンと交わってしまったのです。
画像:Michelangelo Merisi da Caravaggio
アテナはこれに激怒しました。しかし、自身より高位の神であるポセイドンを罰することができず、代わりにメドゥーサを醜い怪物へと変えてしまいます。メドゥーサの長くて美しかった髪はおぞましい毒蛇となり、宝石のように大きな目は見た者を石に変えてしまう「呪いの眼」となってしまいました。メドゥーサを不憫に思ったゴルゴン姉妹の「ステンノー」と「エウリュアレー」はアテナに抗議しますが、同じく醜い怪物へと変えられてしまいます。
その後、メドゥーサは「英雄ペルセウス」によって首を切り取られ殺されてしまいます。メドゥーサの死後も石化の呪いは解けず、アテナはこれを自身の盾に取り付け敵を石化させるために使用しました。メドゥーサは首を切られて死ぬと同時にポセイドンの子どもである双子の「ペガソス」と「クリュサオル」を産み落としています。ゼウスの愛人「イオ」やハデスの愛人「メンテ」など、神の愛人たちは悲惨な末路をたどることが多いようです。
⑦ポセイドンとギガントマキア
ギガントマキアとは神々と巨人族のあいだで宇宙の支配権をめぐって起こった戦争です。このギガントマキアでもポセイドンはその強力な能力を発揮しています。ポセイドンは山や島をそのままくり貫き、それを投げることで敵であるギガース族を押し潰してしまいます。また、コス島の岩山によって「巨人ポリュボテス」を下敷きにして制圧しました。
画像:God of War Ascension Poseidon
ポリュボテスが苦しみながら火を噴くことで、この岩山は「ニーシューロス火山島」になったとされています。このようにポセイドンは戦闘の規模が大きく、アカイア人の遠征軍が行った「トロイア戦争」では、全世界を揺さぶって大地震を起こしています。凄まじい戦闘力ですね。
⑧ポセイドンとアテナ
愛人を怪物に変えられたポセイドンですが、全く別の理由でアテナと争いを起こしています。それはアテナイ(現在のギリシャ共和国首都アテネ)の支配権をめぐっての争いでした。アテナイ民へより良い贈り物をした方を守護神とするという裁定が下されたため、ポセイドンは三又槍「トリアイナ」にて大地を撃ち、塩水の噴水を創ります。しかし、これに対してアテナはアテナイの大地に「オリーブ」の木を生やし支配権を勝ち取りました。
これに憤怒したポセイドンは大洪水を起こしアテナイを襲います。しかし、ゼウスが仲介に入りアテナイに「アテーナー神殿」と「ポセイドーン神殿」を築くことで二人を和解させました。ポセイドンはこの他にもゼウスやその妻である「最高位の女神ヘラ」、「豊穣の神ディオニュソス」や「太陽神ヘリオス」にも争いを仕掛けており、非常に好戦的な神であることがわかります。
⑨ポセイドンとカッシオペイア
「我の美しさは女神にも勝る」と語ったエチオピア王妃「カッシオペイア」の傲慢さに激怒し、ポセイドンは「海獣ケートス」を差し向けエチオピアを滅ぼそうとします。ポセイドンの怒りを鎮めるためカッシオペイアは実の娘である「アンドロメダ」を生贄に捧げようとしました。とんでもない母親ですね。
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可哀想なアンドロメダは波の打ち付ける岩肌に鎖で結び付けられ、命が尽きるのを待つのみでした。しかし、そこに英雄ペルセウスが通りかかります。ペルセウスは退治したばかりのメデューサの頭をケートスに見せ、これを石にしてアンドロメダを救出しました。これが縁でアンドロメダはペルセウスの妻となったのです。
⑩ポセイドンと意味の神ネプトゥヌス
ポセイドンはローマ神話の「海の神ネプトゥヌス」と同一視されています。ネプトゥヌスは古代ローマで「馬の神様」としても信仰されており、そういった点でもポセイドンと共通していました。ポセイドンはネプチューンとして「海王星」の名前の由来にもなっています。
画像:Anthony Jean,alphacoders
出典:wikipedia
いかがでしたか?ケンカ大好き暴れん坊のポセイドンについてご紹介しました。太古の人々が地震や津波などの自然災害に対してどれだけ恐ろしいイメージを持っていたのかがわかりますね。