かつては太陽系の惑星に数えられていた「冥王星」。冥王星はどうして惑星から準惑星に格下げになったのでしょうか?
今回は冥王星が準惑星に見直された経緯や冥王星の不思議な環境、巨大すぎる衛星などについてご紹介します。
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目次
冥王星
①冥王星とは
冥王星は太陽系の外側を周回する「太陽系外縁天体」のひとつです。長らく太陽系の第9惑星とされてきましたが現在では惑星ではなく準惑星に見直されています。
画像:NASA
また、冥王星の月(衛星)が冥王星の直径の半分以上の大きさになるため、ふたつの惑星が重心を共有して公転する「二重惑星」として扱われることもあります。ローマ神話に登場する冥府の神プルートーにちなんでその名前が付けられました。
②冥王星は惑星ではない?
冥王星は1930年に発見されて以降75年ものあいだ太陽系の第9惑星であるとされてきました。しかし、2006年に惑星の定義が見直され冥王星は惑星ではなく準惑星に分類さることになりました。
画像:pixabay
このときに定義された惑星の条件は3つあり、その内容は①太陽の周りを回っていること、②十分重く、重力が強いため丸いこと、③その軌道周辺で群をぬいて大きく、他の同じような大きさの天体が存在しないもの、というものでした。先述したとおり冥王星には二重惑星といわれるほど巨大な衛星が存在し、③に該当しないことから「惑星ではなく準惑星である」と格下げされることになったのです。このことから海外では格下げされることを「プルート(英語で冥王星の意)」と呼ぶようになったそうです。
③冥王星の発見と天王星、海王星の関係
冥王星の発見は海王星、天王星と深い関わりがあります。1840年、天王星の軌道とニュートン力学の分析から当時未発見だった海王星の位置が予測され、1846年にはその存在が実際に確認されました。これは他の天体の重力により天王星の軌道が乱されていると予想されたことからなされた発見です。
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その後、海王星の軌道も天王星と同じように未発見の天体によって乱されていることが予想されました。研究者たちはその星を「惑星X」と呼び、未発見ながら存在するはずの惑星Xを探し続けました。そして1930年、ついに冥王星と呼ばれることになる惑星Xを発見したのです。
④冥王星の大きさ
冥王星の大きさは直径で2,370キロメートルほどで、これは地球の月よりもさらに小さいサイズになります。現在、冥王星は太陽系最小の惑星(正しくは準惑星)として知られており質量も非常に小さいことがわかっていますが、以前は数十年にわたってもっと大きく地球ほどの質量を持つ天体だと考えられていました。太陽系最小の惑星である水星と最大の惑星である木星については関連記事でまとめています。
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画像:NASA
冥王星の大きさや質量が過大評価されていたのは、それまでの観測技術が未熟だったために冥王星と冥王星の衛星をひとつの星として観測してしまっていたことに起因します。しかし、実際の冥王星の質量は月の20%ほどしかなく、冥王星より大きな衛星も7つ以上確認されています。このような話を聞くと冥王星は非常に矮小な天体のように感じてしまいますが、これまでに1000以上発見された太陽系外縁天体の中では最大の大きさを誇ります。
⑤冥王星の軌道
冥王星の軌道は太陽系の惑星と比べるととても特殊です。太陽系の惑星は「黄道面」と呼ばれる平面に近い軌道を周回しており、その軌道は真円に近いものです。これに対して冥王星は黄道面から17°以上傾いており、真円とは程遠い楕円のような軌道を周回しています。このため冥王星の軌道のある場所では内側を周回する海王星よりも太陽に近い軌道をとることになります。
画像:Lookangmany
⑥冥王星の位置
冥王星は太陽から非常に遠く、第8惑星である海王星のさらに外側に位置します。冥王星が惑星だった頃は海王星のひとつ外側の第9惑星とされていましたが、現在は準惑星であるために、間に「準惑星ケレス」が入り太陽から数えて10番目の天体になりました。生命の父ともいえる太陽の謎や特殊な環境は関連記事でまとめています。
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しかし、先述したとおり冥王星は大きく歪な軌道を周回するため、ある地点においては海王星よりも内側を周回し、太陽から8番目に位置することになります。この冥王星と海王星の順番の入れ替わりはおよそ250年ごとに起きており、入れ替わる期間は13年と20年の期間が交互にやってきます。
⑦冥王星と海王星の衝突
冥王星と海王星はその軌道が交差して太陽との距離が入れ替わることから、衝突の危険性があるのではないかといわれていました。しかし、最近の研究でふたつの軌道は最も接近するときでも相当な距離が開いており、決して衝突することはないことがわかっています。
画像:Eurocommuter
また、冥王星は海王星と接近する距離よりも土星と接近する距離の方が近いこともわかっていますが、やはりこの二つが衝突することはありません。
⑧冥王星の距離
冥王星と地球のあいだには約54億キロメートルという途方もない距離があります。これは最高速度が時速6000キロメートルにも達するスペースシャトルで移動したとしても約102年もかかる距離です。秒速30万キロメートルの光でさえ5時間かけなければ到達できません。
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太陽系の中でも比較的外側に位置する土星の距離が地球から70光分ですから、冥王星まではとてつもない距離があることがわかりますね。
⑨冥王星の重力
冥王星の重力は0.62m/s²と弱く、地球の9.807m/s²と比べてもおよそ0.06倍しかありません。これまで冥王星に降り立った宇宙飛行士はいませんが、仮に冥王星に行けたとしたならば体重60kgの男性が3.6kgになってしまいます。
画像:NASA
また、1トンのトラックも60kg程度になるため、男性なら持ち上げることができるかも知れません。しかし、重力が弱すぎるため冥王星での行動は困難を極めるでしょう。過酷すぎる惑星環境を持つ金星については関連記事でまとめています。
⑩冥王星の大気
冥王星には薄い大気があることがわかっていますが、その成分は一定していません。冥王星の大気は太陽に接近しているときは窒素やメタン、一酸化炭素などの大気を保有しています。しかし、太陽から離れる軌道上ではこれらの成分が氷結して冥王星表面に降り積もります。
画像:NASA
これらの成分は太陽に接近する段階で再度昇華し大気となります。この現象には汗が蒸発するときと同じような冷却効果があり、冥王星の地表温度を下げるひとつの原因になっています。太陽系最速の風が吹く海王星については関連記事でまとめています。
⑪冥王星の温度
太陽から遠く先述した大気成分の冷却効果もあり、冥王星の地表温度は-230℃という超低温です。冥王星の地表は氷結したメタンで覆われており、窒素や一酸化炭素の霜が降り積もっています。
画像:NASA
太陽から遥か遠く離れた冥王星は極寒の星なのです。巨大なのに水に浮く奇妙な土星については関連記事でまとめています。
⑫冥王星の衛星カロン
冥王星は確認されているだけでも5つの月(衛星)を持っています。また、小惑星として認められている衛星を3個以上持っているのは今のところ冥王星のみとなります。冥王星の衛星はギリシア神話などになぞらえてカロンやヒドラ、ケルベロスなどの名前が付けられています。
画像:NASA
その中でもカロンは冥王星最大の衛星であり、その直径は冥王星の半径を上回ります。冥王星とカロンはその重心の中心が冥王星ではなくふたつの星の間にあると考えられています。そのため冥王星とカロンは二重惑星だとする天文学者も存在します。地球の衛星である月の謎については関連記事でまとめています。
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⑬冥王星の氷の火山
冥王星には高さ数キロメートル、幅100キロメートル規模の山がいくつか確認されていますが、その中に火山口のような穴が開いているものが確認されました。NASAのエイムズ研究センターのジェフ・ムーア氏は断定はできないとしつつもこれが火山である可能性が高いと発表しました。
画像:NASA
仮にこれが火山であった場合、火山口から噴出するものは高温の溶岩ではなく、氷結した窒素や一酸化炭素が氷の水と混ざったものである可能性が高いといいます。太陽系の遥か彼方に位置する冥王星では氷が噴出する火山があるということなのです。
⑭冥王星の山
冥王星の山は凍った窒素でできた海の上に浮いていると考えられています。これらの山は高さや幅が数千キロメートルの規模だとしても、冥王星の海の密度より低いために氷山のように海に浮くのだといいます。巨大な山脈が海に浮かんでいる光景は地球に暮らす私たちには想像できませんね。
画像:NASA
⑮冥王星の内部の海
冥王星は表面だけでなく内部にも海が存在するといわれています。冥王星の表面には裂けたような巨大な亀裂が多数存在することがわかっています。この裂け目は星の外郭の内部に流れる海が超低温のために氷結した際の膨張でできたのではないかと考えられています。
画像:NASA
ダイヤモンドの海が存在する天王星については関連記事でまとめています。
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⑯冥王星の探査機
冥王星は質量が小さく、地球から遥か遠方に位置しているため探査のハードルが非常に高い天体です。初めて冥王星に接近したのは、2006年に打ち上げられたNASAの「ニュー・ホライズンズ」です。ニュー・ホライズンズは木星の重力を利用して加速を行い、その後冥王星に接近しながら5か月間にわたってデータを収集しました。
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ニュー・ホライズンズは冥王星と衛星カロンの地質や大気を分析し、地形観測から地図の作成も行いました。また、これまで明らかになっていなかった地表面の詳細な写真も撮影しています。不思議な構造物が存在する謎多き火星については関連記事でまとめています。
出典:wikipedia
いかがでしたか?冥王星は探査が難しいため未だに星の実態のほとんどが謎に包まれています。しかし、他に類を見ない巨大な衛星を持ち、氷の火山や海に浮かぶ山脈が存在するなど、私たちの興味を引く天体であることは間違いありません。今後の研究の発展を心待ちにしたいと思います。