かつて地球に生息していた巨大な霊長類「ギガントピテクス」。史上最大の類人猿といわれるギガントピテクスの生態には沢山の魅力が存在します。
今回はギガントピテクスの大きさやその強さ、パンダに関わる絶滅理由などをご紹介します。
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目次
ギガントピテクス
①ギガントピテクスとは?
ギガントピテクスは今から約100万~30万年前の地球に生息していた大型の類人猿です。類人猿の中でも特に巨大化した種であり、史上最大の霊長類としても知られています。現在の中国やインドにあたる地域に生息しており、ヒト科のホモ・エレクトスと同じ時代を生きていました。映画に登場する巨大猿キングコングはこのギガントピテクスから進化したものだという設定になっており、これによってその名を世界中に知られるようになりました。
画像:Frank-Lode
②ギガントピテクスの名前の由来は?
ギガントピテクスの名前には「巨人の猿」という意味があります。この名前は文字どおりギガントピテクスが巨大な類人猿であったことから付けられました。ちなみにギガントピテクスは中国では「巨猿」と呼ばれています。
画像:Jagroar
③ギガントピテクスの大きさは?
ギガントピテクスはその化石が顎と歯の部位しか発見されていないため、正確な姿や大きさを復元することができません。そのため現在の復元はギガントピテクスと他の近縁種の化石を比較して推測されたものになっています。
画像:Kaek
発見されたギガントピテクスの顎の化石は私たちホモ・サピエンスの2倍以上の大きさがあり、奥歯も2.5センチメートル四方の巨大なものでした。このことからギガントピテクスの体長は3メートルを超えていたと考えられています。
④ギガントピテクスの体重は?
近縁種との化石の比較により推定されたギガントピテクスの体重は300~500キログラムという数値でした。また、最大の個体では550キログラムにまで成長したのではないかとされています。この数値は現生のゴリラの3倍以上の重さにあたり、確認されている類人猿の中では飛び抜けて高いものでした。
画像:HodariNundu
これに対してギガントピテクスは顎や歯が巨大なだけで、体格は現生のゴリラと変わらなかったとする研究者も存在します。しかし、顔だけが巨大化した生物という不自然さを考えれば、ギガントピテクスが巨大な類人猿であったと考える方が自然だといえます。そのため現在ではギガントピテクスが史上最大の類人猿であったという説が一般的となっています。
⑤ギガントピテクスは人類なのか?
過去にはギガントピテクスが人類の祖先なのではないかという研究報告がされたことがありました。しかし、現在ではギガントピテクスは人類とは違った系統の動物だったと結論付けられています。そのためギガントピテクスはヒト亜科に属するオランウータンよりもヒト属に近く、ゴリラほどは近くない生物という位置付けになっています。
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⑥ギガントピテクスの食性は?
ギガントピテクスは主に植物を主食としており、竹や果実、種などを幅広く食べる植物食の動物だったと考えられています。しかし、同じ時代の同じ地域に生息していたホモ・エレクトスが肉と植物を食べる雑食性だったため、ギガントピテクスも肉を口にしていた可能性が指摘されています。
巨大なギガントピテクスが肉を貪っている姿を想像するととても恐ろしいですね。
⑦ギガントピテクスの強さは?
現生のゴリラは体重が180キログラムを超える巨体でありながら、片手で木にぶら下がることが可能です。そのためゴリラの握力は500キログラムに達すると考えられています。体重がゴリラの3倍以上あり、体長も3メートルあったギガントピテクスの筋力はゴリラを優に超える強力なものだったはずです。このことからギガントピテクスは肉体的には非常に強い動物であったと考えられています。
しかし、ギガントピテクスの生態は現生のオランウータンに近いとされており、その性格も優しくおとなしいものでした。そのためギガントピテクスに出会った動物たちは巨体の攻撃を恐れる必要はなかったと思われます。とはいえギガントピテクスも野生動物ですから襲われれば反撃をすることもあったはずです。その際に振り回された太い腕の直撃を受けては、当時の捕食者たちも無事では済まなかったことでしょう。
⑧ギガントピテクスの知能
ギガントピテクスの知能は現生の類人猿と同程度だったと考えられています。最も生態が近いといわれているオランウータンは現生の類人猿の中でも特に知能が高いことが知られています。
オランウータンは道具を使いこなすことができ、濡れたタオルを絞ったり、のこぎりで木を切断することもできるといいます。もし本当にギガントピテクスがオランウータンと同程度の知能を持っているとすれば、彼らには人間の4歳児を上回る認識能力があったということになります。
⑨ギガントピテクスの絶滅理由はパンダ?
化石が発見されないギガントピテクスの生態には謎が多いため絶滅した理由は正確にはわかっていませんが、体が大き過ぎたために環境の変化に対応できなかったのではないかといわれています。巨体を維持するためにギガントピテクスは大量の食料を必要としていました。しかし、環境変化によって森林が減少したことでギガントピテクスは十分な餌を確保することができなくなってしまったのです。
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さらに生態的競合となる新しい種の出現がギガントピテクスに追い打ちをかけます。動物園の人気者ジャイアントパンダが誕生したのもギガントピテクスが生きた時代と重なっていました。ジャイアントパンダの発生によってギガントピテクスの餌となる竹が大量に消費されることになったのです。また、ホモ・エレクトスもギガントピテクスの生態的競合に位置していました。こうして巨体であったがためにギガントピテクスは生存競争に敗れ地球上からその姿を消してしまったのです。
⑩ギガントピテクスの生き残りは存在するのか?
世界的に有名なUMA(未確認生物)であるヒマラヤの雪男「イエティ」や「ビッグフット」はギガントピテクスの生き残りなのではないかという説があります。イエティとビッグフットは共に巨大な類人猿のような姿をしており、その正体がギガントピテクスだとするならば、目撃情報にも一致しています。
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しかし、現在ではギガントピテクスが地球に生き残っている確率は限りなく低いといわれています。ギガントピテクスのような巨大な生物が生存していれば、必ず死体や新しい化石が発見されるからです。最近の研究でイエティやビッグフットのものだとされていた体毛がDNA判定の結果、熊のものだったという結果も発表されています。ギガントピテクスが生き残っているという仮説は現代では肯定することが難しいといえるでしょう。
出典:wikipedia
画像:Natural History Museum, London/Science Photo Library
いかがでしたか?絶滅した最大の霊長類ギガントピテクスをご紹介しました。知能の高い巨大な類人猿は何を想い最期のときを迎えたのでしょうか?