はくちょう座の巨大な一等星「デネブ」。地球から遠く離れた宇宙に存在するデネブには天体らしいロマンに溢れた真実が存在します。
今回はデネブの異常な明るさと質量、短過ぎる寿命などについてご紹介します。
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目次
デネブ
①デネブとは
デネブははくちょう座を構成する天体のひとつで夏を代表する天体です。地上から肉眼で観測することのできる一等星であり、こと座の「ベガ」、わし座の「アルタイル」と合わせて「夏の大三角」を形作る星としても知られています。
デネブは巨大で大質量を持つ恒星であり、現在は「白色超巨星」の段階にあることがわかっています。また、およそ1万年後にはこぐま座の「ポラリス」に代わってこのデネブが地球における北極星(天北極に最も近い星)になることがわかっています。
②デネブの名前の由来
デネブという名前にはアラビア語で「雌鳥の尾」という意味があります。これはデネブがはくちょう座の尾の部分に位置することに由来しています。一昔前まではいるか座やくじら座などの尾に位置する星もデネブと呼ばれることがありました。しかし、現在ではデネブははくちょう座のデネブのみを指す名前であると統一されています。
他にもデネブには多くの呼び名が存在しており、特に日本では様々な名前で呼ばれてきました。地上から観測すると天の川の内部に位置していることから「あまのがわぼし」と呼ばれたり、七夕を代表する星の中では後から空に上がってくるために「たなばたのあとぼし」と呼ぶ地域もあるようです。
③デネブの明るさ
デネブは白色超巨星であるため非常に強い光を放っています。その光度はなんと太陽のおよそ5,500倍にも相当します。これは今まで観測されてきた恒星の中でも、星自体の明るさでは上位に位置する明るさです。
太陽から地球に到達する光エネルギーは生物にとっては十分過ぎる量であり、逆にその光の強さによって皮膚にダメージを受けることすらあります。その太陽の5,500倍もの光エネルギーというのですから、デネブの膨大な光量は私たち人類には想像もできないものかも知れません。
④デネブの大きさ
デネブの大きさは太陽の約108倍にも達すると考えられています。これは地球と比較すると11,700倍以上の差があります。同じく夏を代表すること座のベガやわし座のアルタイルは太陽の2~3倍程度の大きさしかないため、デネブが如何に巨大な天体であるかがわかります。
画像:AstroBob
デネブは質量も非常に大きい恒星であることもわかっています。その質量は太陽のおよそ15倍に達します。太陽の数十倍の質量を持つ恒星がその寿命を迎える際には中性子星やブラックホールに姿を変えると考えられています。そのためデネブは最終的にはブラックホールになる可能性もあるです。
⑤デネブの温度
デネブの表面温度は約8,200℃の超高温であることがわかっています。太陽の表面温度はおよそ5,500℃ですから、デネブは太陽よりもずっと高温の天体であることがわかります。
画像:earthsky
さらにデネブは非常に大きい恒星であるため、太陽系の中心にデネブが存在したと仮定した場合、太陽から地球までの距離の30倍以上離れている海王星でさえ灼熱の星になる計算になります。
⑥デネブと地球の距離
地球からデネブまでの距離は約1,411光年も離れています。1光年はおよそ9.5兆キロメートルのため、その距離は実に1京3349兆キロメートルにもなるということです。これは最高時速が時速3万キロメートルのスペースシャトルであっても到達までに5080万年もかかってしまう計算になります。
また、仮にコールドスリープなどの実現により今までよりも遥か遠くの宇宙を旅することができるようになったとしても人類がデネブに到達することはできません。デネブの寿命はスペースシャトルでの到達時間よりもずっと短いからです。
⑦デネブが明るい理由
デネブは地球から遥か遠くに位置している天体ですが、地上からは肉眼でも観測できるほど眩い光を発しています。何故デネブはこれほどまでに明るく見えるのでしょうか?その答えはデネブの光度とその巨大さにあります。
画像:jonvran
デネブは太陽の5,500倍という想像を絶する光度を持っています。この凄まじい光エネルギーによって宇宙の果てともいえる遠方に位置しているデネブの光は地球にまで到達することができるのです。また、太陽の108倍にもなる星自体の大きさもデネブが明るく見える理由のひとつです。
⑧デネブの色
デネブは高温の天体であるため青白い色をしていると考えられています。しかし、巨大な白色超巨星であるデネブはやがて「赤色超巨星」の段階に入り、次第に赤い恒星になっていくとされています。
デネブから地球の距離は1,400光年以上も離れているため、私たちが見ているデネブの光は1,400年以上も昔のものだということになります。つまり現在のデネブはすでに赤色超巨星の段階に入っており、青白い色ではない可能性もあるのです。
⑨デネブの年齢と寿命
現在のデネブの年齢は200万年程度であると考えられており、私たち人類の歴史よりも若い天体であることがわかります。白色超巨星であるデネブは毎日膨大なエネルギーを放出しており、その量は太陽が一日で放出する量の140倍に相当します。
そのためデネブの寿命は太陽などの小さい恒星に比べて非常に短いとされています。また、デネブが赤色超巨星の段階を過ぎると「超新星爆発」を引き起こす可能性が高いと考えられています。
⑩デネブの中性子星とブラックホール
エネルギーを放出し続けたデネブはやがてその寿命を迎える段階になると超新星爆発を起こすことになります。超新星爆発は巨大な恒星が死ぬ間際に起きる天体現象で、広範囲に影響を与える大爆発を伴います。その後、太陽の数十倍の質量を持つ恒星は最終的に中性子星かブラックホールに変化します。
画像:NASA
中性子星はその名のとおり中性子を主成分とする天体で、超新星爆発によって恒星の中心核が圧縮されて形成されます。非常に高密度であり、恒星時代よりも高速で回転しているのが特徴です。中性子星になる恒星よりもさらに巨大な恒星が超新星爆発を起こすとブラックホールが発生します。デネブも死を迎えるとき、中性子星かブラックホールに姿を変えるのです。
⑪デネブの観測
デネブを観測するなら夏の大三角から探すのが簡単です。夏の大三角は晴れた夏の夜空が観測に適しています。空の高いところに位置しているため真上を見上げるような格好で探すことになります。東向きに立って観測したとき一番上にひと際明るい星を見つけることができます。これが「織姫」と呼ばれる天体ベガです。そこから南東に視線を下していくと「彦星」に当たるアルタイルを確認できるはずです。
画像:astrojourney
そしてアルタイルから東に向かって視線を伸ばしていくとベガやアルタイルよりは暗く見えますが、周りの星よりも明るいデネブを見つけることができるはずです。デネブは遠方に位置しているため、その日の天候や空気の成分によって暗く見えてしまうことがあります。暗闇に目を慣らしながら根気よく観測してみてください。
いかがでしたか?はくちょう座の一等星デネブについてご紹介しました。デネブの星言葉には「論理を越えたものへの関心」という意味があるそうです。私たちには計り知れない宇宙のロマンが詰まったデネブにぴったりの星言葉かも知れません。