そもそもアレスって何者?戦争好きな軍神の残念過ぎる真実8

アレス


アテナと同じく戦いの神とされている「軍神アレス」。しかし、アレスには戦神のイメージとはかけ離れた残念過ぎる逸話が存在することをご存知でしょうか?
今回はアレスの能力と由緒正しいその血筋、残念過ぎる武勇伝などをご紹介します。

 
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アレス

①アレスとは

アレス(アレース)はギリシア神話で語られる「戦の神」で、オリュンポス山に住んでいる「オリュンポス十二神」のひとりです。アレースやアレウスと呼ばれることもありますが、日本では「アレス」と訳されることが多いようです。「知略の女神アテナ」が戦いにおける兵士の誇りと理知的な面を象徴するのに対し、アレスは戦争の残酷さと破壊的な面を現した神だとされています。そのため信仰の対象にはならず、古代ギリシア人からは忌み嫌われる存在でした。

アレスとは
画像:National Museum_of Rome – Palazzo Altemps

その理由はアレスが死と悲しみの象徴ともいえる戦争を好む神であったことです。また、蛮族とされていた「トラキア」の民が信仰する神が起源であったこともその理由だといわれています。不人気なアレスには他の神々のように輝かしい逸話が少なく、神話の中でも他の神々から嫌われている存在でした。しかし、アレスが引き起こす戦争によって冥界の住人である死者が増えるため、「冥府の神ハデス」とは比較的仲が良かったとされています。また、オオカミやイノシシなどの気性の荒い動物を聖獣としていました。

 

②アレスの能力

アレスは二本の巨大な槍などを武器としており、両手に持った姿で描かれることが多いようです。あるときは神馬の引く戦車に乗って、またあるときは自身の足で戦場を駆け回りました。他の神々と同じようにアレスの身長は200メートルを超えるといわれていますが、より戦いを楽しむためなのか、戦闘中は人間と同じ大きさになって戦いました。

アレスの能力1
画像:adrenaline

その戦い方もアテナのような戦略的なものではなく、ただ敵陣に突進してなぎ倒すという豪快なものでした。このように戦闘スタイルを相手に合わせてしまうためか、アレスは神(しかも軍神)でありながら半神半人の「英雄ヘラクレス」や、ただの人間である「ディオメデス」にさえ敗れています。

アレスの能力2
画像:Oliver Müller

戦闘しか能のないアレスですが、その戦闘能力は決して高いとはいえないようです。最も彼が神である本来の姿で戦えば結果は違っていたかも知れませんが…。

 

③アレスの性格

戦いの暗黒面を象徴するアレスの性格は乱暴で残酷であり、また不実(誠実でないこと)だったとされています。アレスは知略の女神アテナのように英雄や人間に知恵や神具などの加護を与えることもなく、ただ自身が戦いを楽しむことばかり考えていました。そのため、他の神々とも仲が悪かったとされていますが、彼はその原因が自分にあるとは思っていなかったようです。

アレスの性格
画像:playbuzz

アレスは怒りに任せて行動することでも知られており、娘の「アルキッペー」が「ハリロティオス」に乱暴された際には、彼がゼウスに次ぐ高位の神「海神ポセイドン」の息子と知りながらも死ぬまで殴ることを止めませんでした。しかし、これは娘を思う父親としての行動でもあり、その気持ちに免じて神々の裁判では罪に問われることはありませんでした。戦いに明け暮れるアレスですが娘を思いやる優しい気持ちも持っていたのです。

 

④アレスの家族

アレスは「全知全能の神ゼウス」とその妻「最高位の女神ヘラ」の子どもとして産まれました。神としては評判が悪かったとされるアレスですが、その血統は非常に由緒正しいものです。ゼウスは自由奔放で自分勝手な行動をとることでも知られていますが、アレスは父親の悪いところばかり似てしまったのかも知れません。

アレスの家族
画像:Greek God in his Golden Throne

アレスには「出産の女神エイレイテュイア」と「青春の女神ヘベ」という二人の妹も存在しています。戦神であるアレスは同じく戦いを司る女神アテナと頻繁に衝突し、不仲であることも有名です。

アレスの家族 アテナ
画像:vividscreen

しかし、アテナはゼウスと最初の妻メティスの子どもであるため、アレスにとっては母違いの姉(もしくは妹)ということになります。しかし、ゼウスは数えきれないほどの浮気で大量の隠し子が存在するため、これは決して珍しいことではありませんでした。

アレスの家族 アマゾネス
画像:Attributed to Pierre Mignard

また、アレスは「不和と争いの女神エリス」や「戦いの女神エニュオ」を従者としていますが、この二人の女神は彼の妹であると語られることが多いようです。さらにギリシア神話に登場する女性だけの戦闘民族「アマゾネス」はアレスの娘たちだといわれており、全てのアマゾネスの祖であるともいわれています。

 

⑤アレスの愛人

アレスの妹だとされているエリスやエニュオは彼の妻だと解釈されることもありますが、その真偽は語られる逸話によって変化しハッキリとしていません。しかし、アレスの愛人に関しては「美の女神アプロディーテ」だという見解で一致しています。アプロディーテはすでに「炎と鍛冶の神ヘパイストス」と結婚している人妻でしたが、アレスとのあいだに「混乱の神ポボス」と「恐怖の神デイモス」、「調和の神ハルモニア」を産んでいます。

アレスの愛人 アプロディーテー
画像:goddess

愛と美と性を司り、最も美しい女神として知られているアプロディーテですが、アレスと愛し合ったために「戦の女神」とも呼ばれるようになりました。妻の浮気を「太陽神ヘリオス」から知らされた夫のヘパイストスはアプロディーテを憎み、夫婦仲は完全に冷え込んでしまいます。その後、欲求不満に陥ったヘパイストスは、アレスの姉であるアテナに暴行をはたらいています。完全に家庭崩壊となったアプロディーテですが、彼女を魅了したのはアレスの「美しい顔」でした。

ヘーパイストス
画像:HardCoreDesigns

性格が凶暴で神々から嫌われていたアレスですが、その容姿はすべての男神の中で最も美しかったといわれています。武骨で美形ではなかったとされていたヘパイストスを嫌ったアプロディーテは、美しいアレスに心を奪われてしまったのです。誠実なヘパイストスは初めは夫婦仲の悪化を、ただ妻の機嫌が悪いのだと信じ浮気を疑いもしませんでした。しかし、自分には見せたことのない艶めかしい美しさをアレスに見せる妻を目撃し、ヘパイストスは壊れてしまいます。アレスとアプロディーテは見た目こそ美男美女の組み合わせでしたが、周囲を思いやる美しい心は持ち合わせていなかったのかも知れません。

 

⑥アレスとディオメデス

ディオメデスはギリシア神話に登場する英雄であり、遺跡が世界遺産にも登録されている「ティリンス」の統治者でした。女神アテナの加護を受けていることで有名で、同じく英雄のオデュッセウスと共に戦い、いくつもの逸話を残しています。このディオメデスは人間でありながら神アレスに勝利したという伝説が残っています。

アレスとディオメデス
画像:cloudyskiesandcatharsis

トロイアとの戦いにおいてディオメデスは半神半人の「英雄アイネイアス」を圧倒しました。しかし、アイネイアスを救おうと母アプロディーテが助けに入ります。しかし、ディオメデスは神であるアプロディーテに傷を与え、戦神であるアレスさえも打ち負かしました。女神であるアテナの加護を受けているとはいえ、アレスは人間相手に惨敗したのです。

 

⑦アレスとヘラクレス

ヘラクレスは半神半人の英雄「ペルセウス」の子孫であり、ギリシア神話最強の英雄です。ヘラクレスはゼウスの妻ヘラの母乳を飲んでしまったため不死を手に入れており、それを嫌ったヘラの呪いによって自身の子どもを殺してしまいます。彼はその償いとして「12の功業」と呼ばれる難題に挑むことになります。それは「最強の毒を持つ毒蛇ヒドラ」や「地獄の番犬ケルベロス」などの怪物と戦うという過酷なものでしたが、ヘラクレスはその強靭な肉体と怪力でこれらの難題を全てクリアしています。

アレスとヘーラクレース
画像:howarddavidjohnson

また、ヘラクレスは戦神アレス(一説にはその息子)とも戦ったといわれています。その際にアレスは神にあるまじき惨敗を喫し、ヘラクレスに瀕死の重傷を負わされたといわれています。ヘラクレスの他にもアレスはギリシア神話に登場する双子の子どもの巨人「オートス」と「エピアルテス」に捕まり、13ヵ月も監禁されてしまいました。残念な逸話ばかり残るアレスですが、ディオメデスは女神の加護を受けており、ヘラクレスも不死を持つ神話最強の英雄、オートスとエピアルテスに至っては成長すればオリュンポスさえ滅ぼしたとされる怪人ですから、神とはいえ一人きりで戦う戦闘スタイルのアレスには荷が重かったのかも知れません。

 

⑧アレスと軍神マルス

アレスはローマ神話に登場する「軍神マルス」と同一視されています。ローマ神話の神々はギリシア神話の神々の名前だけを変更したようなものがほとんどです。しかし、マルスに関しては珍しく同一視されているアレスとは違い非常に重要な神とされています。マルスはアレスと同じく「戦いの神」でありオオカミを聖獣としていますが、彼とは違い勇敢で理想の戦士としてローマ神話の主神「最高神ユピテル(ギリシア神話でのゼウス)」に並んで崇拝されるほどの存在でした。

アレスと軍神マルス
画像:heros-angels-gods

その証拠にマルスが由来のマルクス、マリウス、マルティヌスなどの男性の名前は、現在でもアレンジされながらローマ地方で受け継がれています。ちなみにマルスの愛人「ウェヌス(ヴィーナス)」もアレスの愛人アプロディーテと同じく愛を象徴する女神でした。マルスと同意語の「マーズ」は火星に、「ヴィーナス」は金星の英名になっています。

出典:wikipedia
画像:mythologian

 

いかがでしたか?ゼウスの息子でありながら重要とされず忌み嫌われる軍神アレス。そんなアレスの残念過ぎる逸話をご紹介しました。