最古の鳥類として有名になった絶滅動物「始祖鳥」。新しい発見によって始祖鳥の扱われ方も日々変化しています。
今回は始祖鳥の飛行能力や恐竜との関係、新しく発見された最古の鳥類候補などをご紹介します。
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目次
始祖鳥
①始祖鳥とは?
始祖鳥は今から約1億4800万~1億4600万年前のジュラ紀の地球に生息していた生物です。これまで発見されているものの中で最古の鳥類のひとつであるといわれています。
画像:EWilloughby
始祖鳥は生物の進化を知るうえで非常に重要な生物であるため、1860年に発見されて以降多くの議論の的となってきました。その重要性だけでなく小型恐竜に翼が生えたような姿が愛くるしいため古生物マニアの中でも特にファンの多い生物のひとつです。
②始祖鳥の名前の由来は?
始祖鳥の名前には「初めての鳥の祖先」という意味があります。この名前は始祖鳥が発見された当時に化石から初めて羽毛の痕跡が見つかったことに由来して付けられました。ちなみに英名のアーケオプテリクスには「古代の翼」という意味があります。後述しますが始祖鳥が本当に最古の鳥類だったかは多くの議論を呼んでいます。
画像:Book-Rat
③始祖鳥の大きさは?
発見されている化石から始祖鳥の全長は50センチメートルほどだったと考えられています。しかし、始祖鳥は全長の半分程度に匹敵する長い尾を持っていたため胴体部分は30センチメートルもありませんでした。
画像:EWilloughby
これは現生する日本のハシブトガラスより少し小さい程度の大きさになります。また、始祖鳥の姿や大きさはカササギに非常に似ていたと考えられています。ちなみに体重は500グラム程度だったといわれています。
④始祖鳥の特徴は?
始祖鳥は全身を羽毛に覆われた現生の鳥と同じような姿をしており、前肢には翼が生えていました。翼には3本の指と鉤爪があり、クチバシには小さな歯が並んでいました。体の大きさに対して非常に長い尾を持っていることも特徴のひとつです。始祖鳥は鳥であって鳥でない不思議な姿をしていました。
画像:EWilloughby
⑤始祖鳥の羽毛について
始祖鳥の翼に生えた羽毛も現生の鳥類に非常に似た造りになっていました。また、飛行するために用いたと思われる風切羽も確認されています。現生する鳥類と同様に後肢の半分ほどは羽毛が生えていませんでしたが、始祖鳥の仲間の中には後肢が全て羽毛に覆われている種も存在していました。
画像:Apsaravis
始祖鳥の首より上の部分に羽毛が生えていたかはわかっておらず、現在では頭に羽毛は無かったとする見方が主流になっています。しかし、頭部の羽毛に関しては化石として残らなかっただけという可能性も捨てきれず、化石化によって羽毛の劣化が著しいため翼以外の部分は羽毛というよりも毛皮に近い状態だった可能性まであるといいます。
⑥始祖鳥と恐竜の関係は?
始祖鳥は羽毛や翼などの鳥類的特徴と骨格や歯などの恐竜的特徴を併せ持つため、恐竜が鳥類に進化したことを示す証拠になる生物だといわれてきました。ところが始祖鳥に進化する前の羽毛を持った恐竜の化石が始祖鳥よりも古い時代の地層から中々発見されなかったのです。
画像:Chai-Lieb
しかし、2009年に中国で始祖鳥が生息していた時代よりも前と見られる地層から羽毛を持った恐竜の化石が発見されたのです。トロオドン類のこの恐竜の化石からは鳥類や白亜紀の羽毛恐竜とは異なる原始的な羽毛が確認できました。これにより鳥類は恐竜から進化したとする説は疑いようのないものになったのです。
⑦始祖鳥の脳は大きかった?
化石をCTスキャンにかけた結果、始祖鳥は恐竜などよりも脳が大きく発達していたことが明らかになりました。また、感覚器官の中でも特に視覚が優れていたことがわかったのです。他にもバランス感覚などを司る内耳が恐竜よりも鳥類に似ていました。これらは始祖鳥が飛行するために進化していった証拠のひとつだといわれています。
⑧始祖鳥は空を飛べたのか?
始祖鳥が空を飛んでいたことは間違いないとされる一方で彼らが鳥類のように羽ばたくことができたのか、あるいは木から飛び降りてグライダーのように滑空していたのかは現在でも結論が出ていません。始祖鳥は骨格に恐竜の特徴を残していたため現存する鳥類のように翼を背面まで動かすことができなかったと考えられています。
画像:keesey
そのため、現在では始祖鳥は木から滑空することで空を飛んでいたという説が有力だとされています。また、始祖鳥の翼が空中で小回りが利く形状をしていたことも木のあいだを飛んでいたとする説を後押ししました。しかし、始祖鳥の後肢は木の枝にとまるには適した形状ではなかったため、今でも羽ばたいて空を飛んでいたという可能性は残っています。
⑨始祖鳥は最古の鳥類ではない?
2013年に中国で始祖鳥よりも以前の地層から最古の鳥類とみられる生物の化石が発見されました。アウロルニスと名付けられたこの生物は大きな翼を持っていなかったために空を飛ぶことができませんでしたが、研究チームはこれを始祖鳥に替わる最古の鳥類だと主張しました。アウロルニスは始祖鳥の近縁種だと考えることができ、骨格がそれよりずっと原始的だったからです。
画像:LMColver
しかし、現在でもこれらの議論に結論は出ていません。現在では始祖鳥やアウロルニスの他にもアンキオルニスなど複数の最古の鳥類候補が発見されています。それにも関わらず鳥類とそれに酷似したデイノニコサウルス類の恐竜を化石から見極めることが難しいため、最古の鳥類かそれとも恐竜なのかがわからずにいるのです。また、始祖鳥が現生する鳥類の直接の祖先ではないとする見解も広がり、現在でもその肯定と否定が繰り返されているような状況にあります。
出典:wikipedia
画像:Swordlord3d
いかがでしたか?最古の鳥類候補のひとつ始祖鳥をご紹介しました。今後の研究成果や新しい化石の発見を心待ちにしたいと思います。