光明の神として知られる「アポロン」。理想の青年像とされるアポロンには残虐でユーモアあふれる一面が存在しました。
今回は早熟すぎるアポロンの誕生秘話や性格、強力な武器などについてご紹介します。
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目次
アポロン
①アポロンとは
アポロン(アポローン)はギリシア神話に登場する神のひとりで、全知全能のゼウスや海神ポセイドンなどと同じ「オリュンポス十二神」に数えられています。詩歌などの芸術を司る神として知られており、「光明の神」と呼ばれています。同じくオリュンポス十二神のひとり「太陽神ヘルメス」と同一視されることもあり、ゲームやSF作品に登場する際には炎をまとって描かれることが多いようです。
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元は古代アジアで信仰されていた植物の精霊や放牧民の神がモデルとなったと考えられており、「羊飼いの守護神」としても知られています。アポローンと呼ばれることもありますが、日本では「アポロン」と訳すのが一般的です。
②アポロンの能力
アポロンは「狩猟の女神アルテミス」と双子であるとされており、人間が触れれば一瞬で昇天してしまう強力な「黄金の矢」を武器としています。また、この矢にのせて「疫病」を放つことで人間たちを大量死させたり、逆に疫病から救ったりしたという逸話も残っています。
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アポロンは武器だけでなく非常に強力な腕力を持っていたことでも知られています。ギリシアの叙事詩「イリアス」で描かれた戦争では巨大な防壁を素手で粉々に粉砕しています。そのためアポロンはボクシングを創った神としても信仰されています。
③アポロンの性格
アポロンは理性的で節度を重んじる青年神だったため、古代ギリシアにおいては理想の青年像として信仰されていました。しかし、その一方で「疫病の矢」によって人々を大量虐殺したり、賭け事の中で半人半獣の精霊「サテュロス」の生皮を生きたまま剥ぐなど、冷酷で残酷な一面も持っていました。
また、節度を重んじるとされながらも「おふざけ」が過ぎることも多かったようです。「鍛冶の神ヘパイストス」が妻であるアフロディーテと愛人アレスの浮気現場を公開した際には、他の神々が笑いを堪えていたにも関わらずアポロンの茶化しによって一同が大笑いしてしまいます。
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姉であるアルテミス(一説には妹)に無礼をたしなめられた際には、「私は何事も節度を持って控えています。だから、節度を守ることさえも控えているのです。」と答えています。しかし、ユーモアあふれる性格のためかアポロンは現在でも多くの国で愛されているようです。
④アポロンの家族
アポロンは天空神ゼウスとその愛人「女神レト」のあいだに産まれました。狩猟の女神として有名なアルテミスとは双子でありアポロンは弟だとされていますが、ローマ神話ではアポロンが兄として解釈されているようです。母のレトは最も「柔和な女神」として知られていますが、ゼウスとのあいだに子を身籠ったために正妻のヘラから冷遇されることになりました。
最高位の女神だったヘラはレトの妊娠を知ると、「一度でも太陽の照らした場所では出産してはならない」という命令を下しました。また、「大蛇の怪物ピュトン」にレトを追い回させます。そのため、レトはピュトンから逃れながら出産できる場所を探さなければなりませんでした。ヘラはさらに「巨人ティテュオス」にレトを襲わせます。しかし、これに怒ったゼウスがの雷によって、ティテュオスは射殺されることになりました。
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様々な困難に遭いながらもレトはオルテュギアー島にたどり着き、双子のうちのひとりアルテミスを出産します。そして、アルテミスと共にデーロス島に渡り、もうひとりの子どもであるアポロンを産んだとされています。この際にアルテミスはレトの助産師をしており、産まれたばかりのアポロンは追手である大蛇ピュトンを返り討ちにしたといわれています。神とはいえ姉弟そろって早熟過ぎますね。
⑤アポロンの息子アスクレピオス
アポロンはギリシア神話に登場する女性コロニスとのあいだに「アスクレピオス」を儲けています。しかし、アスクレピオスを妊娠した後、妻のコロニスは王族であるイスキュスと結婚させられてしまいます。これに激怒したアポロンはかつて愛したコロニスをその弓で射殺してしまいました。しかし、激しい後悔に襲われたアポロンは死んだコロニスの身体から胎児のアスクレピオスを取り出し、ケンタウロス族の賢者「ケイロン」に育てさせることにします。
ケイロンの下で医術を学んだアスクレピオスは、やがて死者すらも蘇らせることに成功してしまいます。これによって冥界の秩序が乱れることを懸念したハデスはゼウスに対してアスクレピオスの死者蘇生は行き過ぎた行為だと訴えました。訴えを受け入れたゼウスはアスクレピオスを雷で射殺してしまいますが同時に彼の偉業を讃え、宇宙に輝く「へびつかい座」として空へ迎え入れたのでした。
⑥アポロンとヒアシンスの花
ヒュアキントスはギリシア神話に登場するとされる美少年です。あるとき、アポロンと「西風の神ゼピュロス」はヒュアキントスをとても気に入り、少年にアプローチをかけることにします。しかし、アポロンに好意的なヒュアキントスに嫉妬したゼピュロスは、アポロンとヒュアキントスが投げて遊んでいた円盤を風の力で操作します。
円盤はヒュアキントスの頭に直撃するとそれが致命傷になって少年は絶命してしまいました。アポロンは酷く悲しみ、少年の頭から流れた血からは赤い花が咲きました。これが「ヒアシンスの花」の誕生だといわれています。
⑦アポロンと予言者カサンドラ
ギリシア神話に登場するトロイアの王女「カサンドラ」は絶世の美女であったとされています。このカサンドラに恋をしたアポロンは予言の能力を授ける代わりに自身の愛を受け入れるように提案します。カサンドラはアポロンの愛を受け入れ、それによって予言の力を手に入れることになりました。
しかし、予言の力を手に入れたカサンドラはアポロンに弄ばれ惨めに捨てられる自分の未来を予言してしまいます。これにショックを受けた彼女はアポロンの許から逃げ出しました。行方をくらませたカサンドラに激怒したアポロンは、「誰もいうことを信じてくれなくなる」呪いを彼女にかけてしまいます。これによって後にトロイア戦争によって起こる自国の滅亡を予言するも、実の父でさえカサンドラを信じることはなく予言は現実のものとなってしまいました。
いかがでしたか?光明の神として知られるアポロンには意外に冷酷で、ユーモアあふれる一面があることをご紹介しました。