さそり座の巨大な一等星「アンタレス」。宇宙の彼方で赤く輝くアンタレスにもロマンあふれる真実が存在します。
今回はアンタレスの名前の由来や火星との関係、短すぎる寿命などについてご紹介します。
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目次
アンタレス
①アンタレスとは
アンタレスはさそり座を構成する天体のひとつであり、夏を代表する一等星です。太陽の数百倍の大きさを誇る恒星であるため、近年ではメディアで取り上げられる機会も増えてきました。
また、非常に明るい星であることも有名です。アンタレスは赤く美しい光を発しており、星座にも組み込まれているため観測するうえでも人気の高い天体です。
②アンタレスの名前の由来と火星との関係
アンタレスの名前には「火星に似たもの」という意味があります。これはアンタレスが観測される際に火星と間違われた事実に由来しています。アンタレスは火星と同じ赤色をしており、時期によっては火星の軌道に近い位置で観測できることが間違われた原因だといわれています。
画像:madhyamam
アンタレスの名前の由来が一般的によくいわれる「アンチ+アレス(火星に抵抗する)」とする説は実は間違いなのです。また、アンタレスは日本では「赤星」と呼ばれることもあります。
③アンタレスの連星
アンタレスはシリウスなどと同じく連星(双子星)であることがわかっています。そのためアンタレスの主星は「アンタレスA」、伴星は「アンタレスB」と呼ばれています。
アンタレスBはアンタレスAの周りを公転しており、一周するのには878年もかかると考えられています。つまりアンタレスBの一年は地球での878年に相当するということですね。
④アンタレスの明るさ
アンタレスは21個ある一等星のひとつに数えられています。非常に光度の大きい恒星であることがわかっており、その明るさは太陽のおよそ1万倍にも達します。また、赤外線などを含めると太陽の6.5万倍もの光エネルギーを放出していることがわかっています。
画像:elitefon
これに対してアンタレスBの明るさはアンタレスAの370分の一程度しかありません。しかし、それでも太陽と比べるとまだまだずっと明るいのです。私たち人類をはじめ地球に暮らす生物のほとんどは太陽の光の恩恵を受けています。しかし、アンタレスの持つエネルギーはこの太陽をも遥かに凌駕しているのです。
⑤アンタレスの大きさ
アンタレスの大きさは長らく太陽の230倍程度であると考えられてきました。しかし、近年の研究により実際はそれよりずっと大きかったことがわかったのです。現在ではアンタレスの大きさは太陽の800倍ほどはあるとされています。太陽は地球と比較すると109倍の大きさがあるため、アンタレスは地球の8万7千倍以上も大きいということになります。
これに対してアンタレスの質量は太陽のおよそ15.5倍ほどだといわれています。アンタレスは太陽よりも遥かに巨大であまりに激しい光を放出しているため、ベテルギウスなどと同じ「赤色超巨星」であると考えられています。
⑥アンタレスの温度
アンタレスの表面温度はおよそ3,200℃ほどであることがわかっています。これは太陽の表面温度である5,500℃と比べると比較的低温です。「
主系列星」の段階である太陽に対して、アンタレスは恒星としてより寿命に近い赤色超巨星の段階に入っています。そのため主系列星時代に比べて表面温度が低くなっていますが、以前は27,000℃を超える灼熱の天体であったと考えられています。
⑦アンタレスと地球の距離
アンタレスと地球の距離は619.7光年(1光年は約9.5兆キロメートル)も離れています。仮にスペースシャトルに乗ってアンタレス向かうミッションがあったとすれば、宇宙飛行士たちは到着までに2,320万年も待たなければなりません。
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アンタレスと同じくらい遠方に位置している天体は他にも「ベテルギウス」などが存在します。
⑧アンタレスが明るい理由
アンタレスは私たち人類からすると宇宙の果てともいえる遠方に存在しています。しかし、アンタレスの放つ光は地上から肉眼でも確認することができます。その理由はアンタレスという恒星の巨大さにありました。
画像:astronak
アンタレスは天体としてあまりにも大き過ぎるため、その光を遠く離れた地球にまで届けることができました。アンタレスと同様に地球から遠く離れているベテルギウスも非常に巨大な星であるため、地上から一等星として観測することができるのです。
⑨アンタレスの色
アンタレスは恒星としては比較的低温であるため赤に近いオレンジ色をしているといわれています。恒星はその温度によって炎の色が変化することがわかっており、アンタレスよりも高温の太陽は黄色に近いオレンジ色をしています。
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さらに温度が上昇するとシリウスやスピカのように青色の炎を上げるようになります。地上でも高温の炎は青色になるのと同じですね。アンタレスAに対してアンタレスBは高温であるために青白い光を発しているといわれています。しかし、アンタレスAからの光の影響で緑色に観測されることもあるそうです。
⑩アンタレスの寿命
大型の恒星の寿命は決して長くはなく、アンタレスの寿命もおよそ1,000~2,000万年程度であるといわれています。太陽と同程度の恒星の寿命は150億年といわれていますので、アンタレスがいかに短命の星であるかがわかると思います。
画像:elitefon
私たちが暮らす地球は約45億4000万年もの時間をかけて命あふれる現在の姿になりました。これは恒星である太陽の寿命が長かったために起きた奇跡です。もし太陽系の恒星がアンタレスのように短命の星であったとしたら、人類を含めた多くの生命はこの世に誕生することさえなかったでしょう。
⑪アンタレスの観測
アンタレスを観測するなら夏の夜空のさそり座から見つけるのが簡単です。夏の晴れた夜に南の空を見上げると地平線近くに曲線状に並ぶいくつかの星を見つけることができます。これがさそり座の尻尾の部分に当たります。さらにこの曲線の元をたどっていくとさそりの胴体部分にひと際明るい赤い星を確認できると思います。この燃えるように輝く星がアンタレスです。
画像:abc.net
さそり座は夏の南の空の地平線近くを探せば比較的簡単に見つけることができるため、夏を代表する星座のひとつになっています。なるほど、昔の人々がさそりに見立てるのも納得できる特徴的な形をしていますよね。
出典:wikipedia
画像:w-dog wallpaper
いかがでしたか?さそり座の赤い恒星アンタレスをご紹介しました。アンタレスの星言葉には「内面を見つめる瞳」という意味があります。自身や恋人についての悩みがあるときにはアンタレスを眺めてみるのも良いかも知れませんよ。