SF映画や小説で頻繁に描かれる「ブラックホール」。しかし、私たちはそれについてあまり詳しく知りません。
今回はそんなブラックホールについてご紹介します。
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目次
ブラックホールとは?
ブラックホールとは、あまりに大質量で高密度、強重力を持つために物質はもちろんのこと光すら抜け出すことができない天体のことです。「ブラックホール」という呼び方は、1967年にアメリカの物理学者であるジョン・ホイーラーによって付けられました。
あまり知られていませんが、それ以前は「コラプサー」と呼ばれていました。「コラプサーとは崩壊した星」という意味です。光を捕らえることで観測上は黒く見える(正確には見えていない)ことからブラックホールという呼び名がイメージに合い世界中に浸透しました。
ブラックホールの中は私たちの想像を遥かに超えています。目がおかしくなりそうなブラックホールの内部については関連記事にまとめています。
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ブラックホールの観測方法は?
ブラックホールはその性質から目視での観測は非常に難しいといわれています。あまりに重力が強いため光が事象の地平面から抜け出せないからです。
しかし、X線源の観測や質量の指定などから間接的に観測を行うことが可能です。もし、ブラックホールが目視できるとすれば回転する黒い円のように見えるそうです。
事象の地平面とは?
ブラックホールは非常に強い重力を持ち、その半径より内側では脱出するための速度が光速を超えてしまいます。
この半径のことを「シュヴァルツシルト半径」と呼び、この半径を持つ球面を「事象の地平面(シュヴァルツシルト面)」と呼ぶのです。この事象の地平面からは光であっても抜け出すことはできません。
特異点とは?
ブラックホールには重力と密度が無限大(イメージが難しいですが)である場所が存在するといわれています。それが「重力の特異点」と呼ばれています。
重力が無限大に存在するとは地球に暮らす私たちには想像することが困難ですね。
ブラックホールのできる条件は?
ブラックホールの誕生は星の死に深く関係しています。通常星が最期を迎える際、その質量が太陽の数倍までであれば膨張した後に収縮し白色矮星となりゆっくり冷えてその一生を終えます。
しかし、質量が太陽の8倍以上あれば膨張した際、中心部では核融合によって質量の高い元素が次々に作られます。やがて中心部は熱を失い収縮していきますが、このとき星の収縮と同時に重力の収縮が起こります。
この重力収縮によって物質が激しく吹き飛ばされるのが「超新星爆発」です。
さらに太陽の30倍以上の質量を持つ星では重力のあまりの強さに、超新星爆発後も核が収縮を続けます。この現象は「重力崩壊」といわれています。
重力崩壊の段階では星の収縮を阻害するものが存在しないため、永久に収縮し続けます。この状態になった天体を「ブラックホール」と呼ぶのです。
しかし、ブラックホールには複数の種類があることが確認されており、それぞれによって誕生する条件が異なり、その詳細は未だに解明されていません。
宇宙にはブラックホール以外にも謎とされている事象が数多く存在しています。未だ解明されていない宇宙の謎については関連記事にまとめています。
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ブラックホールの種類
ブラックホールは三種類存在するといわれています。
ひとつめは上で説明した恒星ブラックホールです。この恒星ブラックホールは私たちの銀河だけで数億存在するといわれています。
三種の中では最も小さく、巨大な恒星が崩壊するときに誕生します。太陽の3倍の質量を持ちますが1都市程度の大きさしかありません。
ふたつめは超大質量ブラックホールです。このブラックホールは名前からもわかるとおり最も大きなブラックホールになります。
このブラックホールの発生条件はよくわかっていません。半径が太陽とほぼ同じ大きさですが、なんと10億倍の質量を持っています。天の川などの銀河の中心にあるといわれています。
みっつめは中間質量ブラックホールです。恒星ブラックホールと超大質量ブラックホールの中間的な位置付けで、恒星が連鎖的に崩壊するときに形成されるといわれています。2014年に発見された比較的新しいブラックホールです。
ブラックホール周囲の時間
ブラックホールの周囲では時間はゆっくり流れるといわれています。重力が強ければ強くなるほど時間は流れる速度は遅くなります。
また、事象の地平面を超えると時間は止まって見えるといわれています。アインシュタインが提唱した相対性理論と意外な逸話については関連記事にまとめています。
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ブラックホールのエネルギー「ホーキング放射」
事象の地平面を超えてしまえばそこから抜け出すことは不可能であるため、ブラックホールはエネルギーを吸収するのみと考えられてきました。しかし、1970年代にスティーブン・ホーキング博士がブラックホールが事象の地平面周囲にエネルギーを放出していることを証明しました。
これらは「ホーキング放射」と呼ばれ、真空の量子的ゆらぎによって起こるのだといいます。現在、このエネルギーを利用する研究が行われています。
ブラックホールの消滅
ホーキング放射が判明したことにより、ブラックホールもいずれは消滅することがわかってきました。ホーキング放射は、通常であれば打ち消し合うはずの粒子と反粒子が事象の地平面では打ち消し合わず、片方が流出することで発生しています。
粒子を放出し続けることでブラックホールはエネルギーを失い、長い時間をかけてやがては蒸発してしまうのです。
宇宙で大規模な天体現象が起これば、それは地球に暮らす私たち人類にも影響を与えます。考えられる人類滅亡の原因については関連記事にまとめています。
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ブラックホールの中に落ちるとどうなるのか?
ブラックホールに飲み込まれた場合、重力によって人体は引き延ばされ、スパゲティのようになるといわれています。これは「スパゲティ化現象」と呼ばれ、イギリスの宇宙物理学者であるマーティン・リースによって提唱されました。スパゲティ化した物体は感じる間もないほど高速で原始より小さな粒子になってしまうそうです。
また、仮に超大質量ブラックホールに落ちることができれば、姿を保ったままブラックホールの中で生きていられる可能性があるのだそうです。その場合、時空の屈曲を確認でき、ブラックホールに吸い込まれた他のものも見ることができます。
さらには時間がゆっくり流れるため、ビックバンからこれから先の未来まで宇宙の歴史全てを同時に見ることになるのだそうです。
ホワイトホールとは?
ホワイトホールはアインシュタインの一般相対性理論から導き出された理論上存在する天体です。ブラックホールが事象の地平面から光や物質を吸い込むのに対し、ホワイトホールは事象の地平面からそれらを吐き出します。
ブラックホールとホワイトホールは同じ天体と考えられており、それぞれが繋がっているといわれています。しかし、ホワイトホールが吐き出した先は「パラレルワールド」になっており、私たちが存在する宇宙とは別の宇宙になります。
また、数学的に存在の可能性があるというだけで観測されたことはありません。
別の宇宙には一体何者が存在しているのでしょうか?現在では存在の可能性が高いと言われるようになった宇宙人については関連記事にまとめています。
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ブラックホールの動画「星を切り裂くブラックホール」
下の画像はブラックホールが星を吸収し、切り裂いてしまう場面をシミュレーションしたものです。恐ろしくもとても神秘的な光景ですね。
いかがでしたか?事象の地平面や特異点など地上で生きている私たちにはイメージしにくい世界ですね。しかし、だからこそ想像を掻き立てられます。