太古の海に生息した殻を持つ海洋生物「アンモナイト」。長きにわたって地球に存在したこのアンモナイトには沢山の魅力が存在します。
今回はアンモナイトの最大種や復元に隠された謎、実は泳げなかった説などをご紹介します。
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目次
アンモナイト
①アンモナイトとは?
アンモナイトはシルル紀から白亜紀にかけて、約3億5,000万年ものあいだ地球に存在した頭足類の絶滅動物です。シルル紀、デボン紀、石炭紀、ペルム紀、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀と7つの時代をまたいで生息していることから、それぞれの時代のアンモナイトは地層を特定するきっかけとなる「示準化石」にもなっています。アンモナイトの化石は大量に発見されており、古生物学や地質学の研究において非常に重要な役割を果たしています。
②アンモナイトの名前の由来は?
アンモナイトの名前はエジプト神話に登場する「太陽神アモン(アメン)」にちなんで付けられました。アモンは頭に羊のような角を持っているとされており、アンモナイトの貝殻がその角に似ていたことがその由来です。
画像:Lalupa
アモンはエジプト神話における最高神であり、ギリシア神話の「天空神ゼウス」と同一視されています。また、エジプトの若きファラオ「ツタンカーメン」が信仰していたことでも知られています。
③アンモナイトの大きさは?
アンモナイトは大小様々な種が存在しており、そのほとんどは数センチメートルから数十センチメートル程度のものでした。しかし、最大種のアンモナイト「パラプゾシア・セッペンラデンシス」は殻の直径が2メートルを超えている化石が発見されています。
画像:foreshorefossils
これだけ大きな殻を持つパラプゾシア・セッペンラデンシスの全長は、触手を含めると4~5メートルに達していたのではないかと考えられています。
④アンモナイトが生きていた時代は?
アンモナイトは今から約4億1600万年前のシルル紀の海で誕生したのではないかといわれています。シルル紀では陸上に生物が進出を始め、いくつかの節足動物や最初の植物が誕生しました。しかし、生物はまだまだ海洋を主な住処としていました。その後デボン紀に入るとアンモナイトは仲間を増やし繁栄を続けます。海では原始的な魚類が数を増やし、陸では昆虫が出現しました。続く石炭紀では生物は巨大化を始め、海でも陸でも数メートルに達する巨体を持つものが現れます。
画像:Karen Carr.
ペルム紀に入ると両生類や爬虫類が数を増やし、恐竜の祖先となる生物も誕生します。そして、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀には恐竜たちが陸上で大繁栄を極めました。これらの時代をすべて経験したアンモナイトは、地球の歴史の中でも特に繁栄に成功した種であるといえます。しかし、恐竜たちと同じく白亜紀末に起こった大量絶滅によって地球上からその姿を消すことになりました。
⑤アンモナイトの種類は?
アンモナイトの仲間は生息していた時代や殻の形状などによって種類分けされており、その数は1万種を超えています。古い時代に発生したアンモナイトは殻が直線状になっており、その後進化を重ねていくうちに広く知られているような巻貝のような殻を持つようになりました。
画像:foreshorefossils
アンモナイトの仲間は厳しい環境変化を何度も経験し絶滅と進化を繰り返すことで、1万を超える種を発生させることができたのです。
⑥アンモナイトは殻の化石しか発見されない?
発見されるアンモナイトの化石は殻の部分のみで、本体とされる部位は見つかっていません。このことからアンモナイトはイカやタコなど現生の頭足類に近い生物であったと考えられています。
画像:Manuae
「生きた化石」と呼ばれるオウムガイはアンモナイトによく似た殻を持っています。そのため研究初期ではアンモナイトはオウムガイに似た生物であるとされていました。しかし、研究が進むにつれオウムガイはアンモナイトとは別の生物を祖先としていることがわってきました。また、殻の形状からアンモナイトの体の造りを予想したところ、オウムガイよりもイカやタコにずっと近かったことがわかったのです。
⑦アンモナイト本体の謎
先述したとおりアンモナイトは殻の化石しか発見されていません。それでは現在知られているアンモナイトの姿はどのようにして復元させたのでしょうか?その答えを知る鍵はアンモナイトと同じ時代に生息していた「ベレムナイト」という生物が持っていました。
ベレムナイトは現在のイカの近縁種とされている原始的な頭足類の仲間です。このベレムナイトは非常に珍しいことに軟体動物でありながら体のシルエットが化石として残されていました。これによりベレムナイトと同じ時代に生息していたアンモナイトは、ベレムナイトに似せた姿で復元されることとなったのです。しかし、発見される数が多いアンモナイトにシルエットがわかる化石が全く見つからないことから、ベレムナイトよりも軟弱な体組織を持っていたと考えられています。そのためアンモナイトの実際の姿は現在でも謎に包まれています。
⑧アンモナイトは泳げなかった?
アンモナイトの遊泳力については諸説あり、その本体をイカに似せて復元するかタコに似せて復元するかで能力が大きく変わってきます。アンモナイトがイカに似た姿をしていると考えるならば、短い足を持ち漂うように海中を泳いでいたと考えられます。
また、タコに近い姿であったと考えるならば遊泳力は決して高いとはいえず、長い足を器用に使って海底を這い回るように移動する生物だったことになります。アンモナイトがどちらの生物により近かったのかは現在でも結論が出ていません。
⑨アンモナイトは強かったのか?
ある時代では最強の捕食者だったオウムガイとは違い、アンモナイトの生態的地位はすべての時代を通して決して高いとはいえませんでした。アンモナイトは生態系の中間に位置する生物として自身よりも弱い生物を捕食し、逆に自身より強い生物には捕食されていました。
画像:pikabu
しかし、最強の捕食者として巨大に進化することを選ばなかったアンモナイトは多くの食料を必要とせず、環境変化にも対応することができたため1万を超える種を繁栄させることができたのです。
⑩アンモナイトの絶滅理由は?
アンモナイトは白亜紀の後期に起こった大量絶滅によってすべての種が絶滅してしまいました。しかし、この大量絶滅には複数の原因があるといわれています。その中でアンモナイトたちに特にダメージを与えた原因は巨大隕石の衝突による環境変化です。恐竜たちが絶滅するけっかけになったことで有名なこの巨大隕石は、大量の煤(すす)を大気中に放出しました。
画像:Mumuchi
この煤は大気の流れに乗って地球全体を覆い尽くし、宇宙から降り注ぐ太陽光を遮ってしまいます。これによって光合成を失った植物は死滅し、大気中の二酸化炭素が減少した地球は深刻な低気温状態に陥ったのです。急激な寒冷化は陸上だけではなく海洋の生態系をも破壊しました。現在ではこの海水温低下がアンモナイト絶滅の大きな原因であるといわれています。
出典:wikipedia
画像:mediastorehouse
いかがでしたか?殻を持った古代生物アンモナイトについてご紹介しました。5メートルを超えるアンモナイトが漂っていた太古の海。恐怖とともに一目見てみたいという好奇心が沸いてきます。