そもそもゼウスって何者?全知全能に隠されたヤバ過ぎる真実10

ゼウス


全知全能の神として圧倒的な知名度を誇る「ゼウス神」。しかし、このゼウスにはあまり知られていない人間臭さがあることをご存知でしょうか?
今回はゼウスの壮絶な家庭環境と緩すぎる女性関係についてご紹介します。

 
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ゼウス

①ゼウスとは

ゼウスはギリシア神話に登場する神のひとりで、全知全能を司るとされています。全宇宙を支配する「天空神」でありながら、人と神々の世界を維持する守護神的存在でもあります。人の世界と神々の世界の両方において大きな影響力を持ち、天候を自由自在に操作する強力な能力を持っているとされているため、ゲームやSF作品の中でも重要な存在として登場することが多いようです。

ゼウスとは
画像:Zeus

神話や宗教では非常に多くの神々が語られていますが、その中でも絶対的な存在として扱われており、「唯一神」として考えられることもあるようです。神話や宗教に縁がない人でも一度は耳にしたことがある神様ではないでしょうか。

 

②ゼウスの能力

ゼウスは全宇宙を支配しているため天空を意のままとし、大雨や雷、雪なども自在に降らすことができるとされています。「ケラウノス」と呼ばれる「雷光」を意味する武器は、その名の通り素手で雷を掴むような形で描かれることも多いです。このケラウノスの攻撃力はアポロンやアルテミスなどが属するオリュンポス十二神の中でも最強とされており、全宇宙を一撃で破壊し世界を消滅させてしまうほどだといわれています。

ゼウスの能力
画像:GENZOMAN

この他にもゼウスは「アダマス」と呼ばれるこの世に切れない物の無い魔法の鎌も使用します。守りに関しても完璧で「アイギスの肩当て」と呼ばれるケラウノスの攻撃すら防ぐとされる防具を身に着けています。何だか「矛盾」の例え話のようですね。この他にもゼウスは「光輝」と呼ばれる光り輝く鎧や、「恐怖」の名を持つ鎧を持つとされています。絶対神の名に相応しい能力ですね。ゼウスに並ぶ強力な神「海神ポセイドン」に関しては関連記事でもまとめています。

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③ゼウスの性格

紀元前8世紀頃の吟遊詩人ホメロスに描かれたゼウスは弱者を守り、正義と慈悲に満ち溢れた素晴らしい神だとされていました。しかし、その一方で妻以外の女性とのあいだに何人も子どもを作るなど女性関係ではだらしなく、浮気がバレないようにあれこれと画策をする姿も描かれています。また、慈悲深いとされている反面自身の定めた秩序を守らないものに対しては徹底的に罰を与える恐怖の神でもありました。

ゼウスの性格
画像:pixabay

これらのゼウス伝説は天空神信仰を持つ太古のインド・ヨーロッパ系部族と母神、女神信仰を持つその他の部族の神が合わさって生まれたのではないかと考えられています。それにしてもゼウスの人物像だけ聞いてしまうと女性へのだらしなさのインパクトが大きく、信仰の対象としては破綻したイメージを持ってしまいますね。ゼウスの兄弟でありながら正反対の常識人「冥府の神ハデス」については関連記事でもまとめています。

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④ゼウスの家族

ゼウスは父に「巨神族クロノス」、母には「大地の女神レア」を持つ神族の末っ子として生まれました。兄には「冥府の神ハデス」と「海と地震の神ポセイドン」などがいます。父のクロノスは巨神族タイタンの長であり、全宇宙を統一する神々の王でもありました。その一方で女好きで有名な神でもあり、ゼウスの不貞は父親からの遺伝だと考えられています。クロノスは実父である宇宙統治の前任者「天空神ウラノス」の性器を鎌アダマスで切り取り、さらには神々の世界から追放してしまいます。また、実子に権力を奪われることを恐れたクロノスはレアとのあいだに子どもが生まれるたびに我が子を丸呑みにしていました。

ゼウスの家族
画像:theycallmeteddy

これに対して妻のレアが策を講じ、ゼウスと偽って石を呑ませたことでゼウスはクロノスの餌食にならずに済みました。その後、成長したゼウスはクロノスに呑まれた兄弟たちを吐き出させ、同時にクロノスとタイタン巨神族を打ち倒します。また、クロノスから吐き出されたことで兄たちとの優劣が入れ替わり、ゼウスが長男として絶対神になりました。ちなみに母レアは夫であるクロノスの実妹です。凄まじい家庭環境ですね。ゼウスの頭から産まれるという誕生秘話を持った「戦略の女神アテナ」については関連記事でもまとめています。

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⑤ゼウスの妻

ゼウスはその女好きの性格からか結婚相手を幾度となく変えています。ゼウスの最初の結婚相手は「知性の女神メティス」でした。メティスはゼウスの父クロノスが率いるタイタン巨神族の一員でした。しかし、ゼウスがクロノスと戦う際には夫の味方をしています。一族を裏切ってまでゼウスを支えたメティスでしたが、クロノスの母でゼウスの祖母でもあるガイアが「メティスの子が父であるゼウスを超える神になる」と予言すると、子どもを産めなくするために妊娠したままゼウスに呑み込まれてしまいました。これによりゼウスは知性の神メティスの知恵を自らのものとし、「全知」を手に入れたといわれています。とんでもない話ですね。

知性の女神メーティス
画像:Reese

ゼウスの二人目の妻はウラノスとガイアの子であり父クロノスの兄妹でもあった「掟の女神テミス」です。つまりゼウスの叔母にあたる神になります。ゼウスとテミスには「運命の女神モイライ」、「季節の女神ホーラ」、「正義の女神アストライアー」の三人の娘が授かりました。ちなみにモイライは「夜の女神ニュクス」の生まれ変わりで、神すら屈服させる運命の力に魅せられたゼウスが自分の娘へと転生させたとされています。これによりゼウスは運命すら従え、超越する力を手に入れることになりました。

掟の女神テミス
画像:mygodpictures

ゼウスが三人目の妻に目を付けたのは、テミスとの結婚生活の最中でした。その相手は最高位の女神であり、皮肉にも貞節を司る「結婚の女神ヘラ」でした。浮気がバレないようにゼウスはカッコウに姿を変えてヘラの元に向かい、さらには彼女を犯そうとしました。しかし、ヘラは抵抗することなく身体を差し出す代わりに結婚することを求めます。これに対してゼウスはテミスと直ちに離婚し、ヘラと三度目の結婚をすることになりました。

貞節の女神ヘーラー
画像:mygodpictures

ゼウスとヘラは「炎の神ヘパイストス」と「戦の神アレス」の二人の子どもを授かりますが、その後もゼウスの浮気は続き不貞を許さないヘラは愛人やその家族に非情な罰を与えることになります。というか罰を与える相手が違いますよね。ゼウスの息子「鍛冶神ヘパイストス」と「戦神アレス」については関連記事でもまとめています。

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⑥ゼウスの愛人

ヘラと結婚してもゼウスは浮気を繰り返しました。ゼウスの愛人であったギリシア神話に登場する「女神官イオ」はヘラへの浮気の言い訳にゼウスに雌牛に変えられてしまいます。ゼウスは雌牛になったイオを妻に見せ、「牛と遊んでただけ」と言い放ちます。しかし、これを怪しく思ったヘラは雌牛を監禁し、百の眼を持つ巨人アルゴスを見張りに付けました。ゼウスの策によりなんとか見張りから抜け出しだ雌牛のイオですが、妻ヘラの刺客である虻(あぶ)に追いかけまわされ、遥かエジプトの地まで追いやられることになりました。その後、元の姿に戻ったイオは将来エジプト王になるゼウスの隠し子「エパポス」を出産します。イオはその地に「豊穣の女神デメテル」の像を建て、その像と合わせて「豊饒の女神イシス」と呼ばれるようになりました。

女神官イーオー
画像:Giovanni Ambrogio Figino

ゼウスはアイトリア王テスティオスの娘で人妻だった「レダ」にも恋をします。レダに近づくためゼウスは白鳥に変身し、鷹に襲われたフリをして彼女の腕に抱かれました。彼女が拒まないことを確認するとゼウスは正体を現し、そのままレダを抱いてしまいます。レダは赤子ではなく卵を産み、その卵から「ヘレネ」と「クリュタイムネストラ」の二人の娘が誕生しました。ヘレネは絶世の美女であり、これを喜んだゼウスは宇宙に「はくちょう座」を創ったとされています。もうひとりの娘クリュタイムネストラの立場がないですね。同じく絶世の美貌を持つ「美の女神アフロディーテ」については関連記事でもまとめています。

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レーダー
画像:Gustave Moreau

ギリシア神話に登場する「大地の女神エウロペ」もゼウスに一目惚れされた女性のひとりです。美しいエウロペを誘惑するためゼウスは白い牡牛へと姿を変えました。従順な白い牡牛に気を良くしたエウロペがその背にまたがった途端、ゼウス(白い牡牛)は彼女を連れ去ってしまいます。このとき、白い牡牛が駆け回った地域はエウロペの名前にちなんで「ヨーロッパ」と呼ばれるようになりました。ゼウスはクレタ島という島でその正体を現し、彼女とのあいだに三人の子どもを儲けます。その子どもが「クレタ島の王ミノス」、「死後の楽園エリュシオンの長ラダマンテュス」、「リュキアの王サルペドン」でした。ゼウスはこの島を去る際に再び白い雄牛へと変身し、宇宙におうし座が創られました。この他にもゼウスは数えきれない愛人とのあいだに子どもを儲けています。特に有名な「光明の神アポロン」と「狩猟の女神アルテミス」については関連記事でもまとめています。

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大地の女神エウローペー
画像:Jean François de Troy

 

⑦オリンピックとゼウスの関係

古代ギリシアではゼウス神が信仰され、その影響はオリンピックにも深い繋がりがあります。世界遺産にも登録されている古代ギリシアの都市「オリュンピア(オリンピア)」では、その昔古代オリンピックが開催されていました。古代オリンピックはゼウスを讃えるために行われる祭の一種で、現在と同じように4年に一回のペースで開催されました。この時期になるとたとえ戦争中だったとしても古代ギリシア人は戦いを中止し、オリンピックに参加したといいます。古代オリンピックで優勝した者はゼウスの血筋を持つとされ、その名誉を狙って祭は大いに盛り上がりました。

オリンピックとゼウスの関係
画像:James Sullivan

 

⑧オリュンピア=ゼウス神殿

アテナイ(現在のギリシャ共和国首都アテネ)にはローマ帝国によって建てられたゼウスに捧げるために神殿が存在します。この神殿は「オリュンピア=ゼウス神殿」と名付けられ、古代に造られた世界最大の神殿として知られています。紀元前550年頃から建設が始まり、統治者の変更により一度は中止されましたが2世紀頃にローマ皇帝ハドリアヌスの手によって完成されました。

オリュンピア=ゼウス神殿
画像:Ryunpos

 

⑨エジプト神話の中のゼウス

ゼウスはエジプト神話に登場する「最高神アメン」と同一視されています。アメンは太陽の神であることからギリシア神話の「太陽神ヘリオス」や「光明の神アポロン」と比較さることもありますが、アメンが神々の世界の統一者であったことからゼウスのエジプトでの名称であると解釈されています。エジプトにある「アメン神殿」にはギリシア神話の「英雄ペルセウス」や「英雄ヘラクレス」が訪れたという伝説も残っています。

エジプト神話の中のゼウス
画像:mirandabaysinger

 

⑩ローマ神話の中のゼウス

ゼウスはローマ神話の「最高神ユピテル」とも同一視されています。ユピテルは最高神でありながら雷を操る全能の天空神でした。また、ゼウスと同じく倒した敵の武器や防具を聖木に捧げるという共通の伝説も存在しています。描かれる姿もゼウスにそっくりですね。

ローマ神話の中のゼウス
画像:greek-mythology-pantheon,myl-tcg
出典:wikipedia

 

いかがでしたか?全知全能の神ゼウスの意外と人間くさい一面をご紹介しました。世界各地でゼウスと同じような伝説や信仰があることも興味深いですね。太古の人々は見上げた星空に同じ絶対神の姿を見ていたのです。