地球と同じ太陽系の惑星である「水星」。水星は太陽に近いことから研究が進んでおらず、その詳しい環境は一般的にもあまり知られていません。
今回は水星の環境や不思議な逆行現象、惑星探査の実態をご紹介します。
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目次
水星
①水星とは
水星は地球と同じ太陽系に位置し、岩石や金属などから形成される「地球型惑星」のひとつです。地表には多くのクレーターが存在しており、月に非常によく似た形をしています。太陽系惑星の中で最も太陽に近いため調査が進んでおらず、依然として不明な点が多い惑星です。
画像:NASA
②水星の大きさ
水星は太陽系で最も小さい惑星でその直径は4,879キロメートルほどしかありません。これは地球の直径の4割にも満たない大きさです。また、木星や土星の月(衛星)であるガニメデやタイタンよりも小さいということになります。太陽系最大の惑星である木星については関連記事でまとめています。
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③水星の位置
水星は太陽から1番目の軌道を公転しており、太陽系の中で最も太陽に近い惑星です。また、地球よりもふたつ内側の公転軌道に位置しています。
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④水星までの距離
水星と地球の距離はふたつが最も接近するタイミングで9150万キロメートル離れています。これは光の速さで305秒で到達できる距離です。また、1973年に水星探査機マリナー10号打ち上げられた際には146日で水星に到達しています。ちなみに太陽から水星までの距離はおよそ5791万キロメートルといわれています。地球との距離よりずっと太陽に近いんですね。
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⑤水星の観測
水星は太陽との距離が近いため日の出と日の入りのわずかな時間しか観測することができません。また、水星が地球と太陽のちょうど間に入る天文現象を「水星の太陽面通過」と呼び、平均して7年に一度しか観測することができませんが、100年に43秒ずつズレてきていることがわかっています。
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これは水星が太陽に近すぎるため、太陽の異常な重力によって時空が歪んでしまった結果だといわれています。アインシュタインの一般相対性理論で計算したところ計算値と観測のズレとが一致したのです。
⑥水星の重力
水星の重力は3.7 m/s²と地球の約38%程度です。そのため水星に人間が降り立ったと仮定すれば、その人は地球での3倍以上のジャンプをすることが可能です。
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また、地球では持ち上げることが難しい重い物も軽々と持ち上げることができるはずです。しかし、太陽に近い水星は灼熱の星であるため人間が地表に降り立つことは困難です。過酷すぎる惑星環境を持つ金星については関連記事でまとめています。
⑦水星の一日と一年の長さ
水星の一日と一年の長さは不思議な関係にあります。水星の自転周期は58日のため水星の一日は58日です。しかし、水星は地球と全く異なる軌道を周回しているため自転が一周しても地表から見たときに太陽が一周しません。
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地球と同じように太陽が正午線に上りまた一周してくるまでの期間を一日と考えるならば、水星の一日は175日になります。これに対して水星の一年(公転周期)は87日のため、一日が一年の2倍という不思議な状態になります。地球の衛星である月の謎については関連記事でまとめています。
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⑧水星の逆行
水星地表のある場所では太陽の逆行を観測することが可能です。水星でいうところの太陽の逆行とは日の出途中の太陽がある地点で時間が巻き戻されたように再び沈み始める現象です。その後、太陽は何事もなかったかのように再び上っていきます。
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これはある地点で水星の公転速度と自転速度が等しくなり、太陽の動きが止まって見えることから発生する現象です。一日と一年の関係にしろ太陽の逆行にしろ水星の環境は地球では考えられないことばかりですね。ダイヤモンドの海が存在する天王星については関連記事でまとめています。
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⑨水星の温度
水星は太陽に非常に近いため地球の7倍といわれる光と熱エネルギーを受けています。そのため昼の水星の表面温度は430℃に達することがわかっています。
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しかし、温室効果の高い二酸化炭素の大気を持たないことからひとつ外側の金星よりも温度は低く、最も太陽の近くを周回する惑星でありながらも最も地表温度の高い惑星ではありません。氷の火山を持つ不思議な冥王星については関連記事でまとめています。
⑩水星の水と氷
金星には及ばないまでも400℃を超える灼熱の星である水星に、何と氷が存在することがわかっています。水星のクレーターの中には太陽光の当たらない影となる部分が存在しており、この地域では地表温度が-172℃以下を維持していると考えられています。
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1992年にはカリフォルニア州のモハーヴェ砂漠に位置するゴールドストーン深宇宙通信施設が、水星から氷と見られる反応を観測しています。研究者はこの反応を水でできた氷である可能性が最も高いとしており、灼熱の星であるといわれていた水星に氷が存在することが明らかになりました。巨大なのに水に浮く奇妙な土星については関連記事でまとめています。
⑪水星の大気
水星には水素、ヘリウムを主成分としてナトリウムや酸素をわずかに含む薄い大気が存在します。しかし、水星は重力が弱いためこれらの大気は常に宇宙空間に放出され続けています。この大気は太陽から吹き荒れる太陽風によって水星の地表面が崩壊して発生することがわかっています。
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また、太陽風と岩石の成分が反応したり、水星の氷が昇華することでも発生しています。水星の大気は供給と放出を繰り返しているため成分が一定することがありません。太陽系最速の風が吹く海王星については関連記事でまとめています。
⑫水星の磁場と磁気圏
水星は地球の1.1%に相当する磁気圏を持っていることがわかっています。これは自転速度が比較的遅い水星にしては強力で、太陽風を防ぐのに十分な強さがあることがわかっています。また、磁場も一時的なものではなく安定していることが確認されています。
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しかし、水星の磁場は漏れ出しやすい性質を持っており、2008年には水星の惑星磁場から800キロメートルの長さの竜巻のような磁気の束が観測されています。この現象は太陽風によって発生しており、その結果磁場の壁に穴が生じてしまい水星表面に太陽風が流れ込む原因となっています。
⑬水星探査の難しさ
水星は他の惑星よりも太陽の近くを周回するため探査機が到達するための技術的ハードルが非常に高くなります。また、到達できたとしても大気が薄いため空力ブレーキを使用することができません。
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到達のハードルの高さと着陸の困難さが水星探索が進んでいない理由です。不思議な構造物が存在する謎多き火星については関連記事でまとめています。
⑭水星探索の歴史
探索のハードルが高いながらも人類はこれまでに2度、水星への接近観測を成功させています。1973年、水星と金星の大気と地表の調査のため「マリナー10号」がケネディ宇宙センターから地球を飛び立ちました。その後、マリナー10号は金星の重力を利用して加速を行い水星へ接近します。この際、マリナー10号は水星表面の45%の撮影に成功し、水星が地球とよく似た磁場を持っているというデータも観測しました。このミッションのあいだにマリナー10号は2度水星への接近に成功しましたが軌道の関係上どちらも同じ惑星側面への接近となったため、水星表面の残り55%を撮影することはできませんでした。
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2004年、NASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機「メッセンジャー」が2度目の水星探索を目指して地球を飛び立ちます。メッセンジャーは地球、金星、水星の公転運動を利用して加速を行い、約6年半をかけて水星に接近しました。メッセンジャーは水星表面の約95%の撮影に成功し様々なデータを収集することに成功しましたが、2015年には水星表面に墜落しその役目を終えました。また、2018年にはJAXA(宇宙航空研究開発機構)とESA(欧州宇宙機関)の共同プロジェクトである「ベピ・コロンボ」が水星探索のため打ち上げ予定となっています。これはMMO(水星磁気圏探査機)とMPO(水星表面探査機)の2機を水星軌道上に投入し、一年にわたって水星を調査しようとする計画です。まだまだ謎が多い水星ですが、このベピ・コロンボによって新たな発見がされるのではないかと今から注目が集まっています。
出典:wikipedia
いかがでしたか?人類にとってまだまだ未知の領域である水星。今後の新発見を期待することにしましょう。