太陽系最大の惑星「木星」。この木星は私たちの想像以上に地球や人類に大きな影響を与えています。
今回は木星についてその形状や環境、衛星や地球外生命体の可能性などをご紹介します。
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目次
木星
①木星とは
木星は地球と同じ太陽系に位置する惑星のひとつです。ガスによって形成されるガス惑星であり、その巨大さから古代より観測されその存在が知られてきました。古代の人々は木星を神話や信仰の対象にし、英名である「Jupiter(ジュピター)」も古代ローマ神話の神ユーピテルから付けられました。
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②木星の大きさ
木星は太陽系の中で最大の惑星で直径は約14万キロメートルに達します。その巨大さから太陽系の中で太陽に次ぐ重力の中心部であり、周囲の多くの天体に影響を与えています。その質量は太陽を除く他の太陽系惑星を合わせた合計の2.5倍で、地球と比べるとおよそ318倍にもなります。
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また、直径は地球の11倍に達します。半径は太陽の0.1倍ほどですが、密度はほとんど変わりません。木星がいかに巨大な天体化がわかります。太陽系最小の惑星である水星については関連記事でまとめています。
③木星の位置
木星は太陽から5番目の軌道を周回しており、地球より2つ外側の惑星です。太陽から地球よりも遠くに位置しているため、太陽から受ける熱よりも木星自体が発している熱の方が大きいです。
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木星の位置は太陽系の他の惑星にとっても非常に重要だといわれています。
④木星までの距離
太陽から木星までの距離は非常は気が遠くなるほど離れており、太陽を1メートルほどの球体だと考えると木星までの距離は約560メートルにもなるといわれています。地球から木星までの距離は7億5000万キロメートルほどで、光の速さで40分あれば到達できる距離です。スペースシャトルなどの宇宙飛行船であれば地球から2年5ヵ月で行くことが可能な計算になります。
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⑤木星の重力
木星の重力はその巨大さから想像できるとおりとても大きく、太陽系の多くの天体に影響を与えています。ガス惑星のため地表の降り立つことはできませんが、それができたと仮定した場合には地球のおよそ2.36倍の重力がかかることになります。
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これは体重が50kgの人が125kgになったのと同じくらいの負荷です。木星探査機はこのような木星の強い重力も計算に入れて設計しなければなりません。過酷すぎる惑星環境を持つ金星については関連記事でまとめています。
⑥木星型惑星
木星のようにガスでできた惑星は「木星型惑星」と呼ばれています。水素やヘリウムなどの気体で構成された惑星で土星などもこれにあたります。
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過去には天王星や海王星もガスでできた木星型惑星だと考えられてきましたが、現在では「天王星型惑星(巨大氷惑星)」に分類されています。また、木星型惑星はガスで構成された惑星意外にも巨大な惑星を指す言葉としても使われており、そういった意味では木星・土星・天王星・海王星が現在もこれに該当します。
⑦木星の一年と一日の長さ
木星はその巨大さに関わらず非常に高速で自転しており、一日の長さは9時間56分しかありません。また、一年の長さは11年9ヵ月と非常に長くなっています。
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赤道傾斜角が3°しかないため季節はほぼ存在しません。当たり前ですが地球に比べると不思議な環境ですね。
⑧木星の温度
太陽との距離から計算する木星の表面温度は-186℃ですが、実際には-140℃であることがわかっています。このことから木星は内部で熱エネルギーが発生していると考えられており、そのエネルギーは太陽から受ける熱量のおよそ2倍であると推測されています。
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この熱エネルギーは木星中心部の重力が原因で発生しているのではないかといわれています。氷の火山を持つ不思議な冥王星については関連記事でまとめています。
⑨木星の大気
木星の大気は約90%の水素と約10%のヘリウムガスで構成されています。また、わずかながら水蒸気やアンモニア、酸素などが含まれていることもわかっています。大気の上層部では低温のためにアンモニアが凍結し、結晶になって浮かんでいます。
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木星の大気は太陽系惑星で最も厚く、およそ5,000キロメートルもの大気の層が存在しているといわれています。そのため大気圧は地球の10倍にも達します。太陽系最速の風が吹く海王星については関連記事でまとめています。
⑩木星の雲
木星には先述したアンモニアの凍結結晶などからできた雲が存在します。この雲は常に木星表面を流れており、秒速100メートルを超える嵐や乱気流を発生させています。また、雲の中では雷が起こっていることがわかっていますが、これは地球のものと比較して1000倍以上の大きさを持つといわれています。
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⑪木星の模様
木星の特徴ともいえるオレンジ色の模様ですが、これは大赤斑(だいせきはん)と呼ばれる高気圧の巨大な渦です。最大のものでは4万キロメートル×1万4千キロメートルという凄まじい規模で、その中に地球が2~3個すっぽりと収まってしまうほどの大きさです。
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この大赤斑が発生する原因は詳しくわかっていませんが、観測の結果年々縮小していることがわかっています。ダイヤモンドの海が存在する天王星については関連記事でまとめています。
関連記事:ダイヤモンドの海に長すぎる昼夜!神秘的な天王星の真実
⑫木星の磁場
地球と同じように木星も磁場を持っていますが、その磁力は地球の14倍という強力なものです。木星の磁場は金属水素のマントルが対流することで発生すると考えられており、太陽を除くと太陽系最大の磁力を有しています。
⑬木星電波とオーロラ
木星はその強力な磁場と磁気圏により地球にも到達する「木星電波」を発しています。また、木星の衛星イオから発生するイオンが木星の大気と衝突することでオーロラなどの発光現象を観測することが可能です。木星のオーロラは地球と比べると非常に大規模なものになります。
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⑭木星と隕石
木星はその強力な重力から周囲の隕石を引き付けており、過去にそれらと数え切れないほど衝突していることがわかっています。
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太陽に次ぐ重力を持つ木星の引力は太陽系全体に影響を与えていることがわかっていますが、仮に木星が隕石を引き付けていなければ地球はとっくの昔に巨大隕石と衝突して消滅していたと考えられています。現在の地球があるのは木星のおかげという訳ですね。
⑮木星の輪(環)
実は木星には土星と同じように輪(環)が存在することがわかっています。木星の輪は土星のものよりも暗く観測が難しいため長い間発見されることはありませんでした。しかし、1960年にキエフ天文台の観測により木星の輪が存在するのではないかという説が挙がり、その後ボイジャー1号によってその存在が確認されました。
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木星の輪は隕石との衝突の際に巻き上げられた塵などが、その強力な重力によって捕らえられたことによってできたと考えられています。現在、木星には3つの輪が存在することがわかっています。不思議な構造物が存在する謎多き火星については関連記事でまとめています。
⑯木星の衛星
これまでに木星には67個もの衛星があることがわかっています。初めて木星の衛星が観測されたのは1610年のことで、ガリレオ・ガリレイによって4つの衛星が発見されました。これらの衛星は発見者にちなんで「ガリレオ衛星」と呼ばれています。その後、望遠鏡や宇宙探査機の発達により数多くの衛星が発見されることになりました。
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これらの星の多くはそれまで独立した天体だったものが木星の強力な重力に捕らえられ衛星に変化したものだといわれています。地球の衛星である月の謎については関連記事でまとめています。
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⑰木星の衛星イオ
木星の第1衛星である「イオ」はギリシア神話に登場するイーオーにちなんでその名前が付けられました。イオはガリレオ惑星のひとつで地球以外に初めて火山活動が観測された天体です。とても明るい天体で1600年代のガリレオが手作りした望遠鏡でも確認することができました。イオにはクレーターがほとんど存在せず、火山活動によって形成された火山や山脈、高原などが広がっています。これらにはギリシア神話や各国の神話から名前が付けられており、日本関連のものではアマテラスやスサノオ、カミナリなどが存在します。
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ボイジャー1号の観測したイオの火山は噴煙を秒速1キロメートルという高速で300キロメートルの高さにまで噴出していました。これらの噴煙には硫黄やナトリウムなどが含まれており、それらは噴出された勢いのまま宇宙空間まで放出されていました。また、25キロメートル大のカルデラも100個以上確認されています。イオの火山活動は木星の強力な引力により発生しており、その力によりイオの地表面は100メートル以上も上下しています。その摩擦熱によりイオの地殻内部には50キロメートルにも及ぶマグマの海があることもわかっています。イオの火山が噴出した噴煙は木星の大気に衝突し、先述したオーロラなどの発光現象を引き起こします。
⑱木星の衛星 エウロパ
イオと同じくガリレオ衛星の「エウロパ」は木星の第2衛星です。ギリシア神話に登場するゼウスの想い人エウローペーにちなんでその名前が付けられました。エウロパの表面は3キロメートルにも及ぶ氷の層に覆われており、数多くの裂け目が確認できます。木星から受ける重力により内部で熱エネルギーが発生していることから、氷の層の下は100キロメートル以上の海になっていると予想されています。1990年代にガリレオ探査機が氷の裂け目から一度氷が水に溶けて再度氷結したと思われる痕跡を観測したため、エウロパ内部に海がある可能性は高いといわれています。
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エウロパの表面にはクレーターが少なく線状をした特殊な隆起地形が広がっています。これらにもイオと同じように神話などから名前が付けられています。エウロパは多くの氷と熱源を持ち、海と生命の存在が期待されていることからNASA(アメリカ航空宇宙局)の惑星探査計画の最有力候補のひとつに数えられています。NASAは2020年に調査機を打ち上げ2028年にはエウロパの周回軌道上から調査を開始する計画を進めています。
⑲木星の衛星エウロパの水
2016年9月、NASAは木星の衛星エウロパの表面で水が間欠泉(かんけつせん)のように噴出している様子をハッブル宇宙望遠鏡による観測で見つけたと発表しました。以前からエウロパの氷の下には海が存在する可能性が高いと考えられていましたが、今回の観測により氷の下に液体の水が存在することが確認されました。
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エウロパの海が実在するならばそこに地球外生命体が存在している可能性も高くなります。巨大なのに水に浮く奇妙な土星については関連記事でまとめています。
⑳木星の衛星エウロパの生命
木星の衛星エウロパで液体の水が観測されたことからその内部に海が存在している可能性がさらに高くなりました。エウロパの環境から推測すると内部の海は地球の深海に近い環境になっていると考えられており、生命が存在していても不思議ではありません。地球のガラパゴス海嶺の深海にある熱水噴出孔の周りには太陽光がまったく届かないにもかかわらず非常に特殊な食物連鎖をが形成されていることもわかっています。エウロパの氷の下にも熱水噴出孔が存在するといわれているため、同じような生命が存在している可能性が高いといえます。生命の父ともいえる太陽の謎や特殊な環境は関連記事でまとめています。
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画像:P. Rona
しかし、研究者たちは慎重な姿勢をくずしておらず、今回発見された液体の水の噴出に関してもかなりの高確率ではあるものの確実に存在するとは言い切れないとしています。これに対してNASAは先述したエウロパ探索計画により、噴出した水の成分を採取できればその成分から生命が存在できるか否かを調査できるとしています。今回の発見は地球外生命体の発見に結びつくとても重要な内容のため、研究者たちが慎重になるのは仕方ないともいえますが、どちらにせよ2028年頃にはエウロパの真実が明らかになるのです。
いかがでしたか?太陽系の中でも非常に大きな影響力を持つ木星と地球外生命体の発見が期待されている衛星についてご紹介しました。エウロパに関していえば今後12年ほどで重大な発見がされるかも知れません。宇宙はまだまだロマンに溢れていますね。