宇宙ロマンの代表格「ブラックホール」。ブラックホールは観測がとても難しく、未だ多くの謎に包まれています。
しかし、人類のテクノロジーの進歩により、近年ではブラックホールについていくつかの真実も判明しています。
今回はブラックホールの性質や観測されたばかりの画像、将来的な可能性などについてご紹介します。
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目次
ブラックホールとは
ブラックホールとは、大質量、高密度、高重力の性質を持つ天体です。あまりに密度が高く強い重力を持つため物質だけでなく光ですらブラックホールから抜け出すことはできません。
光を反射しないためブラックホールを肉眼で観測することはできません。
ブラックホールは過去にはコラプサー(破壊された星)という名前で呼ばれていました。
しかし、1960年代にアメリカの有名な物理学者ジョン・ホイーラーと周囲の人間が使用し始めたのをきっかけに『ブラックホール』という名前で世界中に浸透していきました。
事象の地平面
ブラックーホールの近くではその強力な重力によって時空さえも歪められると考えられており、さらにある半径よりも内側になると光でさえも脱出が不可能になってしまいます。
この半径を『シュヴァルツシルト半径』と呼び、シュヴァルツシルト半径を持つ球面は『事象の地平面』と呼ばれています。
人類が知ることができる情報は光や電磁波などの光速に近いものによって伝えられます。しかし、事象の地平面では光速ですら脱出できないため私たちはその内部を知ることができないのです。
重力の特異点
事象の地平面の中心には「重力の特異点」と呼ばれる空間が存在します。この特異点は「重力と密度が無限大になる」という異常な特性を持っています。
重力の特異点は回転していないブラックホールではその中心に存在するとされていますが、回転運動を伴うブラックホールではリング状をしていると考えられています。
密度や重力が無限大になるという概念は地球に暮らす私たちの想像をはるかに凌駕しています。
ホーキング放射
イギリスの有名な理論物理学者スティーブン・ホーキング博士はブラックホール(事象の地平面)は吸収するだけの完全に一方通行な存在ではなく、熱的エネルギーを放出している可能性があると考えました。
この理論は提唱者であるホーキング博士にちなんで『ホーキング放射』と呼ばれています。
海外メディアNaturePhysicsによれば、2016年にイスラエルの科学者ジェフ・スタインハウアーが人工的なブラックホールの観測実験においてホーキング放射に似た現象を発見しました。
この報告はホーキング放射の実証になるのではないかといわれ世界中から注目を浴びています。
ブラックホールにの性質については関連記事でも紹介しています。
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ブラックホールの中に吸い込まれたらどうなってしまうのか
ブラックホールの中に吸い込まれてしまったら人間はどうなってしまうのでしょうか?ここではブラックホールに吸い込まれた人間とそれを目撃した人間の目線を現在の仮説をもとにご紹介します。
また、この仮説は超大型ブラックホールを想定しており、その規模によって異なる結果になることがあることをあらかじめ記しておきます。
吸い込まれるのを目撃した人間目線
あなたの知人がブラックホールの中に吸い込まれたとします。あなたは彼が吸い込まれていくところをブラックホールの外から見ています。
彼は事象の地平面に向かうにしたがってどんどん加速していきます。彼の身体は激しく歪んだり、長く伸びて見えるようになります。
さらに時間が経過すると彼の動きがゆっくりに見えてきます。そして事象の地平面に到達すると彼の身体は伸びて歪んだままほぼ完全に停止してしまいます。
最後にあなたはホーキング放射の熱によって気が遠くなるほどゆっくりと灰になっていく彼の姿を目撃します。
ブラックホールの中に吸い込まれた人間の目線
次はブラックホールに吸い込まれた側の目線で考えていきたいと思います。突然ですが、あなたはブラックホールの中に吸い込まれました。
意外なことにあなたは重力を感じることも身体が歪んだり伸びたりすることもありません。
また、時間がゆっくり流れるように感じたり、身体が燃え上がることもないのです。ブラックホールの中ではその重力に従って落下していくためこれらの影響をほとんど受けず、あなたはびっくりするほど何事もないまま特異点まで落下し続けます。
吸い込まれた場合のシミュレーション動画
ブラックホールの中に落ちてもあなたの身には何も起こらないことがわかりましたが、あなたが見ることになる景色は非常に不思議な光景です。
下の動画はブラックホールの中に吸い込まれた人間の目線をシミュレーションしたものです。感動するような怖ろしいような複雑な気持ちになりますね。
動画:youtube
ブラックホール情報のパラドックス
上記ふたつの説明だとあなたがブラックホールの中に吸い込まれたことを観測している人がいた場合、その人はゆっくりと灰になるあなたを目撃します。しかし、あなたは灰になることはありませんでした。
つまり、同じ人間がふたり存在しなければ説明できない現象が起こってしまいます。しかし、このふたつの仮説は量子学と一般相対性理論によって導かれた答えであり、どちらも正しいという矛盾が発生します。
これらの問題は「ブラックホール情報のパラドックス」と呼ばれ、学者たちの頭を悩ませました。
ブラックホールは宇宙人の居住区?
ブラックホールに関して、ロシア科学アカデミーの宇宙学者、ヴャチェスラフ・ドクチャーエフ博士が発表した面白い仮説があります。それは高度な地球外生命体がブラックホールを居住区にしている可能性かあるというものです。
ブラックホールの中には安定的な領域が存在し、その軌道に乗ることができれば地球が太陽を周回するようにブラックホール内部を周回し続けることができるといわれています。博士曰くこの軌道を確保できるほど高度な技術を持った文明であれば、ブラックホールに住むという選択をするはずだというのです。
ブラックホールの中では小惑星の衝突などの外的リスクがなく、時間がゆっくり流れることによりほとんど不老不死といっていい寿命を得ることができます。現在、人類もホーキング放射エネルギーの利用を視野に入れるなど、ブラックホールを活用しようとする意見もあります。
私たちより高度な文明を持つ地球外生命体ならそれを実践していてもおかしくはないのです。
地球外生命体である宇宙人については関連記事にまとめています。
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私たちはすでにブラックホールの中にいる?
また、先ほどの説明とは逆説的に聞こえてしまうかも知れませんが、私たちはすでにブラックホールの中に存在している可能性があるといいます。
私たちの宇宙が誕生するきっかけになった「ビッグバン」が起こる前には、宇宙全てのエネルギーと質量が信じられないほど圧縮された状態で存在していたといわれています。
このような現象が起こり得る空間はブラックホールの中であり、私たちの宇宙はその中で生まれたというのです。
現在では多くの物理学者が宇宙はひとつではなく、複数存在している「マルチバース(多宇宙)」という考え方を支持しています。これら他の宇宙が存在している場所こそがブラックホールの中だというのです。
アインシュタインの理論では特異点は無限の密度を持つとされていますが、この世に無限という概念は存在しないという矛盾も抱えています。ブラックホールの中の質量やエネルギーは無限に近いほど圧縮され続けますが、実際には完全な無限ではなくある時ついに大爆発を起こしてしまします。
これがビッグバンなのではないのかというのです。もし、この考えが正しかった場合、私たちの宇宙は他の宇宙のブラックホールの中に存在するということになるのです。
いかがでしたか?ブラックホールの話はいつも私たちの想像を遥かに凌駕します。私たちの科学技術が進歩し、さらに新しい発見がされるのを心待ちにしましょう。